救急隊員は「7700円が必要」と説明してくれるのか?

「救急車を向かわせることはできますが、あなたの場合、救急病院で処置を受けたあとは入院にはならず帰宅になると思います。その場合、7700円を上乗せして支払うことになるかもしれません」とアドバイスしてくれるのだろうか。それとも通報者宅にそのまま出動して、その日の当番である3病院のいずれかに、粛々と搬送するだけなのだろうか。

現場に到着した救急隊が患部を確認して、「これは処置後にあきらかに帰宅となる」と判断した場合、通報者に自己負担が発生する可能性がきわめて高いと教えてくれれば、不要な救急搬送も7700円の自己負担も発生しなくて済むと思われるのだが、そのようにケース・バイ・ケースで柔軟な運用がなされるのだろうか。

松阪市の担当者によれば、119番への通報があった場合は、容体にかかわらず救急隊の出動はおこなわれ、いずれかの3病院に搬送されることになるだろうとのこと。指令センターや救急隊から自己負担発生の可能性について説明があるのかどうかについてはわからなかったが、少なくとも、軽症の場合でも救急隊が搬送せずに引き上げることはないようだ。

患者には医師から説明しなければならないのか?

②3病院に救急搬送して治療せねばならないほどの状態ではないものの、なんらかの応急処置が必要な人を受け入れられる医療体制は充実しているのか?

これは重要な点である。松阪市の担当者の「容体にかかわらずとりあえず3病院に搬送することになる」との回答の理由が、「他に救急車を受け入れられる医療機関が市内に存在しないため」というのであれば問題だ。119番をコールする患者さんのニーズの多くは「すぐに診察と治療を受けたい」というものであって、必ずしも「入院させてもらいたい」とはかぎらないからだ。

シニア男性を診察する医師
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つまり、入院にならない程度のものかもしれないが、足の傷から出血が止まらず痛くて歩けない、足をひねってパンパンに腫れているなどといった患者の行き先の確保は必要不可欠だ。こうした患者さんを、この3病院以外に救急車ごと受け入れ応急処置を施せる医療機関を事前に選定し、市民にわかりやすく提示しておくことは、このスキームで運用する以上、絶対的に必要だ。

③3病院に搬送後、入院を要さないものであっても医師の判断で選定療養費を徴収しない場合もあるというが、これは医師が患者に直接説明することになるのか?

先述したように、選定療養費は医療機関が患者さんに請求するものである。もし一律で請求するということであれば、受付事務から機械的に徴収すればすむ話なのだが、話をややこしくしているのは「救急車を利用して入院に至らなかったとしても、医師が必要と判断した場合などは徴収しない」としている点だ。