経済力で命が選別されることだけはあってはならない
松阪市の担当者によれば、今回の施策は救急要請を制限するものではないという。しかし、119番にコールしてしまうと容体にかかわらず3病院のいずれかにとりあえず搬送されるとの運用で進められてしまえば、かりに自治体として意図せぬものであったとしても、結果として、つらい症状で119番にコールしたいと考える人にたいしても、それを思いとどまらせる“効果”が生じることは必至であろう。
松阪市以外にもこのスキームで救急医療体制を維持しようとしている自治体はすでに存在するが、これらの自治体すべてに、この施策によっていかなるメリットとデメリットがもたらされているのか、詳細な現状把握と丁寧な分析をおこない、十分な透明性のもと真摯に市民にたいして説明していく姿勢が強く求められよう。
そして、救急要請を控えたことによって人命にかかわる事態が生じるなど、看過できないデメリットが覚知された場合は、遅滞なくこの施策を中止するとの柔軟な姿勢を、市民にたいして事前に示しておくべきである。
財力の多寡で命の選別をすることなく、いかに公平に市民の安心・安全を担保していくか。その覚悟が、これらの自治体に問われている。