親がリラックスした状態で説得に入る
ポイント3:説得の体
こちらが緊張したり、力んだりすれば、当然相手も緊張して力が入る。
説得する側が、「お父さんのため」「お母さんのため」と言いながら、力んだり、高圧的な態度で免許返納を迫ったりすれば、当然親も構えてしまう。
永らく車社会で暮らしてきた人にとって免許返納は、自分の手足を手放すに等しい「悔しい」体験であり、自分の老いと向き合う「厳しい」現実である。
親も自分も感情的にならず、リラックスしてこの重要な決断について話し、受け入れられたら理想的だ。
そこで提案したいのが、親孝行だ。
仕事が忙しいかもしれない。遠く離れて暮らしている人にとっては、そう頻繁に、親元に帰れないかもしれない。
だからこそ、積極的に機会を見つけて、食事に誘ったり、温泉旅行に連れ出したりして、親との距離(想像以上にあるもの)を縮める努力をお勧めする。
「まだ元気だから」と放置してはいけない
しばらくぶりに、我が子と共に過ごす中で、親は子の成長を感じるものだ。
「老いては子に従え」という言葉もある。
わが子の成長を感じたとき、本気で親を心配してくれていることを感じたとき、あれほど意固地になって免許返納を嫌がっていた親が「私もそろそろ免許の自主返納をしようか」と、自分から切り出すようになったりするのだ。
お寺にいると、お檀家さんの親子、双方からそんな体験談を聞かされることがある。
私自身が住む地域も、車がないと不便で仕方がない。だから決して人ごとではない。
もちろん人間はみな、個人差がある。
田舎に行くと75歳を過ぎても、若者よりも元気で、矍鑠とした高齢者もたくさんおられる。
だから、高齢者だからといって、誰にでも「免許返納」を説教するのは失礼だ。
ただ、親の心身の衰えを感じながらも、慚愧の心を忘れて、「自分の親はまだ元気だから」とか「不便になったら可哀想だから」という理由で、取り返しのつかないことになるまで放っておくこともまた愚かである。
免許返納のコツは「説得」するのではなく、親自身に「納得」してもらうこと。
焦らず、力まず、少しずつ。親に寄り添い、情報提供し、「免許返納」を受け入れやすくして差し上げるといい。