受験期を迎えた子どもに、親はどのように接するべきか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「親からの高すぎる期待や要求は、子どもにストレスや不安を与え、悪影響を及ぼす。『子どものため』と、親自身が頑張りすぎてはいけない」という――。
「石を全部取り除け!」と怒る父親
私は境内にある幼稚園で10年、空手道場で20年、現場で子どもと関わる中で、頑張りすぎてしまう親をイヤというほど見てきた。
私がここでいう「頑張りすぎる」とは何か。
我が子に一所懸命になりすぎて、親が自分自身を見失ってしまうこと。
例えば幼稚園での出来事。
自然豊かな寺の境内山林には、あちこちに木の切り株があったり、石が転がっていたりする。子どもたちの中には、夢中で遊んでいるうちに、それらにつまずいて転ぶ子どもが出てくる。
子どもは、そこでつまずいて転ぶことによって、次からは転ばなくなる。それこそが、教室で先生が教えられない貴重な学習であるがゆえに、必要以上に石を取り除くことはしない。
ところが、子どもが石につまずいて転んだときに「石が悪い!」と、石に当たる母親がいる。あるいは、ケガして帰った子どもを見て「なんでそんな危険な石を放っておくんだ。全部取り除け!」とものすごい剣幕で電話をかけてくる父親がいる。
空手の試合に負け、さらに親にぶん殴られる
例えば空手の大会での出来事。
新型コロナウイルスのパンデミック以前は、子どもの全国大会ともなれば、出場選手は1000人を超える。毎日3時間、週5日稽古してきた選手たちが、大人顔負けの試合を繰り広げる。
タイトルを狙えるような子どもたちは、本人以上に先生も必死だし、親も必死だ。
そんな大人たちの期待を背負った選手が負けるとどうなるか。なんと会場の隅で、親にぶん殴られているのだ。
これらは、一部の親による極端な例に思われるかもしれない。
けれども子どもの受験となれば、多くの親が知らず知らずのうちに、頑張りすぎてしまう傾向がある。