「レギュラーサイズ分を渡す意思」に反してはいけない

② ①を窃取すること

「窃取」とは、お金や品物を占有している人の意思に反して、その人が管理・支配することが難しい状態にし、かつ自分や第三者が占有する状態にすることをいいます。

冒頭のニュースで検討すると、コーヒーの占有者であるコンビニは、レギュラーサイズの分量のコーヒーを購入した人に渡す意思しか持っていません。

そのため、購入客がカフェラテやラージサイズの分量のコーヒーを注ぎ入れることは、コンビニ側の意思に反して(意思を超えて)コーヒーの管理・支配をすることが難しい状態にし、自分が占有する状態にしているといえるので、②の要件を満たします。

ディスポーザブルカップ
写真=iStock.com/gbrundin
※写真はイメージです

ボタンの押し間違いでは窃盗罪は成立しない

③ 故意があること

「故意」とは、犯罪行為であることを認識・認容しながら行為に及ぶことをいいます。

窃盗罪では、先述した「お金や品物を占有している人の意思に反して、その人が管理・支配することが難しい状態にし、かつ自分や第三者が占有する状態にすること」についての認識・認容が必要となります。

レギュラーコーヒーを購入したのに、ボタンを押し間違えてカフェラテやラージサイズの分量のコーヒーを注ぎ入れてしまった場合、その時点では故意がなく、窃盗罪は成立しません。

ただ、ボタンを押し間違えたあとの行動によっては、故意が生じたと判断される可能性があります。たとえば、ボタンを押し間違えてしまったことにすぐ気づいたものの、それでも構わないとそのまま持ち帰ってしまったような場合には、故意が生じたと判断されて窃盗罪になる可能性が高いでしょう。

また、店外に持ち出した後にボタンを押し間違えたことに気づいたものの、コンビニに報告しなかった場合には、窃盗罪ではなく刑法第254条の占有離脱物横領罪(罰則は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料)が成立する可能性があります。