「怪しい動きの仲間」が店員たちを翻弄
ベトナム人窃盗団の多くは、見張り役と実行役、運転手役に分かれて行動し、犯意成立要件や既遂時期を悪用するような手口で犯行に至る。広い売り場を有する店舗を好み、細い通路や柱の陰、棚が高い場所で隠匿行為に及ぶのだ。前もって店内を偵察するのは当たり前で、店側の警戒に気付けば挑発するように店内を徘徊して、商品を出し入れするような動作を繰り返して挑発する輩までいる。
犯行の途中で仲間を呼び集め、店内を別々に素早くも怪しく行動することで、注視する売り場スタッフや保安員を翻弄。追尾者を右往左往させ、そのどさくさに紛れて、高額商品を盗み出すという手口もあった。
彼らの逃げ足は速く、たとえブツ(被害品のこと)を取り返すことはできても、共犯者全員を捕まえられるケースは稀だ。昨今の窃盗団は、警戒の網にかからぬよう行動範囲を広げて神出鬼没に暗躍しており、その動向すらつかみきれない。一度狙われてしまえば、系列店が軒並みやられてしまうことになるため、商品を守る立場にある者の負担は大きい。
「盗まれるほうが悪」というおかしな風潮
いまなお現場に立つ筆者の肌感でいえば、コロナ以降、ベトナム人による大量万引きは減少傾向にある。かつては、各警察署においてベトナム語の通訳不足に頭を悩ませていた実態もあったが、そうした光景を見る機会は減り、常習者の多くがコロナ禍で帰国を余儀なくされたと感じるほどだ。
おそらくは、店内で警戒される機会が増え、万引きしにくくなってきた側面もあるのだろう。彼らの狙う商品は決まっているし、人着(人相や着衣)もわかりやすいため、入店に気づくことさえできれば充分に警戒できるのだ。そのためなのかは不明であるが、果実や盆栽、自動車などを盗む者が増え、スマホを利用した詐欺や麻薬売買など、より割のいい犯罪にシフトする者も目立つ。
ベトナムでは、「盗まれるほうが悪」とする風潮が強く、その感覚は特異だ。それを裏付けるがごとく、これまで捕捉してきたベトナム人被疑者の多くは、明確な証拠があるのに容疑を否認して、反省のない態度で居直ることばかりであった。
その厚かましさには呆れるばかりだが、日本の警察は外国人犯罪に厳しく、万引きをして捕まり被害申告されてしまえば、被害の大小にかかわらず立件される。ドリンク1本、わずか数十円の被害で逮捕され、帰国を条件に釈放される事案もあった。来日されるベトナム人の皆さんには、日本で真面目に働く同胞のためにも、いかなる犯罪行為も慎むよう強く警告しておきたい。