万引きの認知件数は24年ぶりに増加

警察庁の「犯罪統計資料」によると、令和5年内の日本全国における万引き認知件数は9万3168件で、前年に比べて9570件増加している(11.4%増)。警察庁による「万引き被害全件通報」の通達(平成22年)がされて以降、年々減少していた認知件数が上昇に転じたのは、24年ぶりのことになる。年間被害総額を8089億円とする説もあるが、正確な数字を出すのは不可能なことといえるだろう。

万引きの認知件数が増加した主たる要因を挙げれば、店舗の大規模化や盗品換金のしやすさをはじめ、レジ袋有料化に伴うマイバッグ利用の推奨、セルフレジやレジカートなどの普及が大きい。レジ袋の有料化により、大きなバッグを持ち込むことの不自然さがなくなり、それをいいことに大量の商品を一気に持ち出す者が後を絶たないのだ。

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その多くは換金目的の犯行で、匿名性の高い商品取引アプリなどで売却する。環境を守るための政策が犯行を誘発して、商店の安全安心と利益を奪う結果は皮肉なことで、その損失分が価格転嫁されることで消費者負担が増している事実も見逃せない。

「万引き天国」と言われる現状を変えられるか

さらにはセルフレジやレジカートなどを悪用する新たな手口も出てきている。これらを導入している店舗では、売り場で商品を隠匿する者が減り、詐欺的なレジ不正で商品を盗み出す者が増えているのだ。たとえ悪意があったとしても、スキャンに失敗したなどと言い訳しやすいため、不正行為が横行してしまうのだろう。

これは、昨今頻発している無人販売店における盗難被害についても同じことがいえるが、セルフレジの導入により削減可能とされるはずの人件費より、不正や盗難による被害が上回ってしまうケースまで散見される。いくら防犯カメラで牽制しても、それなりの覚悟を持った窃盗犯の犯意は強く、人による対応がなければ被害を減らすことはできないだろう。

セルフレジでイチゴの箱をスキャンする女性の手
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです

万引き防止対策は、生産性が皆無であることから、後回しにされることが多い。売ることを第一に考えれば、それも仕方のないことといえよう。しかし、すべての面において被疑者が有利で、万引き天国と言われても仕方のないような現状は、常に歯痒く打破したいところだ。

予算をかけずに、万引き被害を減らしたいなら、積極的な声かけをもって顧客と関わるほかない。防犯カメラの存在で犯行を思いとどまる者は少ないが、店員の声かけによって思いとどまる人は、たくさんいるのである。

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