うまく使うことで健康に良い効果を

ここまで聞くとダイエットや非常に便利なもののように見えますが、NSSの中でとくに人工甘味料についてはネットや週刊誌でいろいろ話題になっています。「人工甘味料」「危険」で検索すると癌になりやすいだとか太りやすいだとかいろいろな話が出回っています。

確かに、WHOは2023年5月に「体重のコントロールや糖尿病などのリスクを減らすためにNSSを使用しないこと」を推奨しています(※4)。これはNSSの使用が長期的には体脂肪を減らす上でメリットが少なく、2型糖尿病、心血管病などの長期的に望ましくない結果があるからとしています。

なぜ短期間の使用では体重が減っているのに、長期間の結果では逆の結果が出ているのかというと研究デザインの違いによるものが大きいです。

短期間の使用はランダム化比較試験と呼ばれるかなり管理された環境によって行われるNSSの使用と砂糖入り飲料を比べた試験であるのに対して、長期間の研究は前向きコホート研究と呼ばれるものでNSSを使用している人と使用していない人を比べた試験です。

これらを受けてどのように解釈をするかというと、砂糖の代わりにNSSを使用することは体重を減らしたりする効果があるのですが、そもそも甘い飲み物を飲みたい時にはカロリーの高いものを食べる傾向にあるでしょうし、甘い飲みものを飲みたい気持ちがずっとある人はやはり太りやすい傾向になるのだろうと考えます。

ですので、NSSが腸管や脳へ影響するという報告もありますが、特別なんらかの悪さをするのではなく、甘いものを飲みたい習慣がエネルギー摂取量過多となり、太りやすい環境をつくり、2型糖尿病や心臓病に繋がりやすくなるということです。

また、発がん性に関してはNSSの摂取量の多さとがんの発生を評価した研究で、NSSの摂取とがんの発生は否定されており、人工甘味料とがんの話はほとんどがネズミを対象とした話ですので、現時点では安心してよさそうです。

さて、この人工甘味料をうまく使う方法ですが、少なくとも短期間であれば効果的であると考えられます。そしてその間に、甘いものも食べる習慣が問題となっているようであれば、それらを修正して使用することです。

また、WHOの推奨については糖尿病を持っている人については省かれており、血糖値を下げる目的で砂糖のかわりにNSSを使用するのは推奨されている他、砂糖と比べて虫歯などについてのよい影響も言われています(※1)

いずれにせよ、できるだけとらないほうがよいといったことでもなく、NSSをうまく使うことで健康によい影響がありますので、上手に使っていきましょう。

血糖値を下げる「ベジファースト」の本当の効果

ベジファーストという言葉はとても有名な言葉なので、聞いたことがない人はもはやいらっしゃらないでしょう。ベジ(野菜を)ファースト(先に食べる)という食事方法のひとつです。名前からイメージがつきやすいため、かなり知れ渡っています。

「ベジファースト! 知ってる! 野菜から食べたらよいってやつでしょ!」でも、ベジファーストが何がどうよいのかご存知ですか?

例えばハウス食品のHP(※5)には「急激な血糖値の上昇を防ぎ、生活習慣病や肥満を抑制する」と書かれています。また、大正薬品のHPには「糖の吸収を抑え、ダイエットに繋がる」「老化を進めにくい」などの意味合いの記載があります(※6)。では、ベジファーストの論文を見ていきましょう。

まずは2011年から行われた研究です。2型糖尿病の患者さん19人を対象として、最初に野菜を5分間食べ、次に主菜を食べ、野菜と炭水化物の間隔を10分間空けて、米またはパンを摂取し、翌日にはその逆の順番で食事を行いました。

これはクロスオーバー試験と言って、全ての人がどちらの方法も行うことでその違いを見た研究です。

次ページのグラフでは健康な30歳前後の21名も加わって書かれています。

このとおり、ベジファーストをすることで糖尿病の人も糖尿病でない人も血糖値の上昇が抑えられているのがわかると思います(※7)

また、2型糖尿病患者101名を対象として、ベジファーストと従来の食事療法を比べた研究(※8)についてお話しします。どちらかの指導を2年間受け、その間のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の経過を見ています。その結果がこちらになります。

◆がベジファーストを受けた患者さんで、■が従来の食事療法を行った患者さんです。やはり、血糖値が下がっているように見えますね。

また、この効果は野菜に限らず、肉や魚でも同様の結果のようです。2型糖尿病患者さん12人と健常者10人に対して、魚⇒米、米⇒魚、肉⇒米の3つのパターンをそれぞれ行った研究(※9)の研究の結果は次の通りです。

最後に、境界型糖尿病の人に「A栄養指導なし」、「B最初の5分間は炭水化物を含まない食品(すなわち、サラダ、肉、魚)のみを摂取し5分間待った後、米などの炭水化物を含む食品を摂取するように指導」、「C花王が開発したスマート和食プログラムを用いたバランス食を指導」の3つに振り分けて6カ月間の経過を見た研究(※10)を見てみましょう。

結果は次のグラフの通りで、A群(茶色)と比べてB群(オレンジ色)とC群(灰色)は食事摂取量が減り、体重が減っています。ちなみに、血糖値やHbA1cには違いは見られませんでした。