「お疲れ様です」の正しい使い分け

仕事終わり、上司への挨拶は
× ご苦労様です

○ お疲れ様です

「ご苦労様です」「ご苦労でございます」という言葉の歴史について触れたいと思います。

江戸時代まで、「ご苦労様でございます」は、藩主に対して臣下が使う言葉でした。

つまり、下の立場の者が目上の人に、「ご苦労をお察し申し上げます」という意味で使われていたのです。

ところが大正時代、今から100年ほど前になると、会社などで上司が部下に対して、「ご苦労様」と使うようになるのです。

以来、現代でも、上司や上長など立場の高い人が、部下や立場が下の人に対して、ねぎらいや親切、同情の気持ちを込めて話すのに、「ご苦労様」はよく使われています。

「苦労」には「労」という漢字が入っています。「労」は「相手の努力や骨折りに感謝し、いたわるという意味です。

なので、「ご苦労様」という言葉は使わないようにして、「お疲れ様です」と言いましょう。

ちなみに、社外の人に対しては、「お疲れ様です」ではなく、「お世話になっております」あるいは「本日はありがとうございました」を使うようにしましょう。

相手をくつろいだ気持ちにする一言

商談や面接で、相手に席を勧めるとき
× お座りください

○ おかけください

「お座り」という言葉から、何を連想しますか?

もちろん、犬のしつけですね。

したがって、会社を訪ねてきた人に対して「お座りください」と言うのは、なんだか、犬に対して「お座り!」と命令しているのと同じような印象を相手に与えてしまいます。

日本語には、「座る」の意味の「腰をかける」といううるわしい言葉があります。

人に席を勧めるときは、「こちらにおかけください」と言うのが適切です。

山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)
山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)

そのときに、「大変お待たせしております。ただいま、担当者を呼んでおりますので」など、相手がくつろいだ気持ちになれるように、一言添えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、「腰をかける」に似た言い方で、「腰を入れる」「腰を据える」という言葉があります。

これはどちらも、あることに本腰を入れて取り組むという、強い意志を表す言葉です。

ビジネスシーンでは、仕事に真剣に取り組む際によく使われる言葉ですので、よく覚えておきましょう。

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