義援金が250億円以上集まった理由

さて、台湾を「親日の国」として多くの人が認識するきっかけとなったのは、2011年に起こった東日本大震災への対応ではないでしょうか。これは日本への友情の証、とくに台湾でたびたび起こる地震や水害で救援をもらった恩返しの意味も込められているでしょう。2360万人ほどの国から、約73億台湾ドル(当時のレートで250億円以上)もの震災義援金が送られるという、政治家やメディアがいくらがんばってもできない行動です。

この驚くべき数字は、単なる親日という言葉だけでは説明がつかない部分がありますよね。この背景にも、台湾特有の文化が見えてきます。

誤解を恐れずに言うと、これだけの義援金が集まったのは、震災に苦しむ日本を助けようという「ブーム」が起きたことが大きいのです。台湾はブームに乗りやすい国民性があります。先ほど述べたように同調圧力はないにもかかわらず、一度「いいことだ」と考えたことには、一気に乗っていく社会の空気があるわけです。

チャリティー
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台湾人は「巨額の義援金」を覚えていない

実は、2008年に中国で起きた四川大地震に対しても、台湾からおよそ70億台湾ドルの義援金が寄せられています。その際も、東日本大震災のときのように社会全体が高い同情心に包まれました。地震が起きた当時は馬英九政権が選挙で勝利を収めた年で、中台関係改善の機運が高く、中国への関心も高いものがありました。

野嶋剛『台湾の本音』(光文社新書)
野嶋剛『台湾の本音』(光文社新書)

日本への義援金も大変有り難いものであることはいうまでもない一方で、「親日だから」というだけで受け止めるだけではなく、台湾の国民性という部分から分析してもいいと思います。台湾の人たちに「震災のときはありがとうございました」と伝えると、意外と当時のことを覚えていない人も多いのです。

いずれにせよ、台湾は一つの関心ごとに対して突き進む、ワン・イシューの国なんですね。ですから、政権に問題が起きれば反対票が集まって政権交代が起こる。2022年の統一地方選で民進党が大敗したのも、社会の空気によるものが大きかったですし、新型コロナ対策が迅速に浸透したのも、こうした台湾ならではの「ノリの良さ」という特色が発揮されたといえるでしょう。

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