台湾と日本に共通する「おもてなし」

他方、今の日本も「親台」と論じてもまったく問題はありません。日本人の台湾旅行は増加して、2019年に台湾を訪れたのは約217万人(台湾交通部観光局調べ)となり、同年のエイビーロード・リサーチ・センターの調査によれば、人気旅行先のトップに5年連続で台湾が選ばれています。

こうした変化には、海外旅行というものに対する日本人の価値観が変わってきたことが要因となっています。ひと昔前であれば、海外旅行は何がなんでも欧米へ、という感覚がありましたね。しかし、近年は旅のなかで自分がどんな時間を過ごすかが目的になってきた。限られた休暇のなかで、自分がエンジョイできる空間を欲するようになったわけです。となると、台湾の狭い国土がマッチした部分があったのではないかと思います。

また台湾旅行が人気となるもう一つの要因として、台湾ならではのホスピタリティも挙げられると思います。台湾には「好客ハオカー(hào kè)」という言葉があります。日本語に訳すと「おもてなし」に近い意味になるでしょう。日本もおもてなしの国と自称していますが、台湾の好客とはちょっと違います。

日本のおもてなしといえば、一律に礼儀正しい対応が求められますが、これは見方によっては形式的な冷たいものに映ってしまうこともあります。一方で台湾の場合、かたちは二の次にして、とにかく徹底的に相手がもういいと思うほどまでもてなす態度を大事にする。そうしたサービス精神が、訪台客の心をつかむポイントかもしれません。

「お客には優しくしたほうが得」という生存戦略

こうした台湾人のホスピタリティが生まれたのは、その地理的、歴史的な影響が大きいと思います。

お話ししてきた通り、台湾へはさまざまな場所から、多くの人々が移り住んできました。ですからお客さんには台湾を好きになってもらって、自分たちの生存空間を守ってもらうという文化が根づいている。冷たい言い方をすると、お客さんには優しくしておいたほうが得だという生存戦略なのです。

私の体感としては、台湾人は日本人に対してはとくに優しい。ほかの人たちの国を冷たくしているわけではないんですが、日本人と分かると5割増くらいで優しくなります。ですから台湾へ行けば、やはり気持ちがいいですし、台湾を好きになります。