ハンバーガー構造は崩れつつある

では、この第一世代と第二世代に入らない人々がいます。それが50歳から80歳ぐらいの人々で、彼らは戦後の国民党統治を良くも悪くも受け止め、そのなかで成長し、生きてきた人々です。彼らはいわゆる「抗日史観」に基づく教育も経験し、日本語にもあまり親しんでおらず、若いころの日本旅行や日本文化の経験も限定的です。

台湾の民主化を果たした李登輝はいうまでもなく第一世代ですが、その後総統になった陳水扁、馬英九、蔡英文の3人の総統はいずれも親日的な感情が強くはない世代の人々で、日本との関係においても、外交上は日本を重視するものの、日本が好きだということを感じるかというと、個人的には私はそういう印象を持っていません。

ですから、老壮青でいえば、ハンバーガーの具(非親日)の壮年を、親日の老年・青年で挟んでいるような構図でした。そして、忘れてはならないのは、老年の「日本語世代」は人生の舞台から去って世代的に次第に先細りしていき、青年世代がマジョリティになり、壮年の世代も、昨今の情勢から、当然中国へは失望を強め、日本には好感を持つようになっていきます。このハンバーガー構造はかなり崩れつつあります。

アメリカ・中国・台湾の国旗
写真=iStock.com/HUNG CHIN LIU
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安全保障や外交の利害が絡まない絶妙なポジション

日本のアカデミズムの一部には「台湾を親日と呼ぶ」ことに違和感を感じる人々もいます。私も、台湾と日本との間の複雑な歴史を知らずに、単純に「親日、親日」と有り難がるのはどうかと思います。

しかし、世論調査を見れば分かるように、台湾での日本の好感度は高いものがあります。その客観データをもとに「親日」であると論じることは事実に基づいているので、何ら問題はないでしょう。「日本に強い好感を持つ社会」などと言い換えてもいいですが、それも面倒です。大事なのは、外国人が他国の人々の思いを政治的な立場やイデオロギーに基づいて強引に論じないことです。

データをご紹介しましょう。台湾の大使館にあたる日本台湾交流協会が何年かに一度行っている台湾の対日世論調査があります。

2021年度の調査によれば、「あなたの最も好きな国はどこですか」という質問に対して、60%の人が「日本」と答えています。第2位は意外ですが「中国」で5%、第3位は「アメリカ」で4%。基本的に日本がぶっちぎりで好かれていることは間違いありません。

アメリカは台湾では意外ですが人気がありません。歴史的にアメリカから持ち上げられたり、裏切られたりと、いろいろ嫌な体験もあったからでしょう。頼りにしているけれども、好きかどうかは別というところがあるのです。それに比べて、日本は、安全保障や外交などの利害が大きくは絡まないからこそ、シンプルに「好き」と言ってもらえるのかもしれない。有り難いことです。