耐震性能には厳しいが、断熱性能の基準は存在しない

性能を測る共通のものさしがない中で、消費者が家の性能を比べることは困難です。ハウスメーカーの知名度や、「国の省エネ基準の最高性能」などという謳い文句を信用して住宅を建てたものの、夏は暑く冬は寒い、というケースが後を絶ちません。しかも車や家電と違い、住宅は人生で何度も購入するわけではないため、気づいたことを次に活かす機会がありません。

高橋真樹『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』(集英社新書)
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住宅業界の怠慢を容認してきたのは、監督官庁である国土交通省です。国は住宅業界への配慮を重視して、統一した性能の表示を求めず、最低限の性能を義務化する制度もつくりませんでした。国やメーカーは、1995年に起きた阪神・淡路大震災以降、命に直結する耐震性能については力を入れてきました。しかし、省エネ性能については命に関わるものではないとの考えから、軽視してきたのです。

住まい手の生命や財産を守るはずの住宅が、逆にそれらを損ねてきたという事実を、国や住宅業界は大いに反省する必要があります。そして消費者も、これからはハウスメーカーの言いなりではなく、自ら住宅の性能に関心を持ち、学び、行動する、主体的な住まい手になる必要がありそうです。

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