家具や住宅の劣化を防ぐことにもつながる

そして設備更新費やメンテナンス費についても、断熱気密性能を重視した住宅なら、相対的に安く済ませることができます。

設備では、エアコンは13年程度で更新するのが一般的ですが、4台必要な住宅と2台で済む住宅とでは、2倍の差が出てきます。また、暑さや寒さ、湿度のコントロールが容易なことで、結露やカビも発生せず、家具や住宅そのものの劣化を抑えることができます。それにより、メンテナンス費も大幅に下がります。こうした出費の差を加えると、Aの家とBの家との差額はさらに広がります。それに加えて、すぐには数値化しにくい健康や快適性についてのメリットもあります。

窓の結露
写真=iStock.com/Nataliia Yankovets
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住宅を断熱化することによる健康面のメリットを金額に試算する試みも行われています。先述(第2回「寒い部屋でガマンしていると健康寿命が4年縮まる…最新研究でわかった『住宅と健康』の怖い関係」)のスマートウェルネス住宅等推進調査事業では、夜間頻尿にともなう経済的損失を、当事者が直接支払う費用に加えて、国の健康保険や労働損失費用などの間接費も合わせると、1人あたり年間約11万円と算出しています。住宅が暖かくなればこの費用が不要になります。

住宅を断熱して健康的に過ごすことによる経済効果は、個人レベルはもちろん、国レベルでも見過ごせない金額になります。

断熱はやった分だけ効果を感じられる

住宅を建てる際、多くの人は目に見える部分ばかりに注目しがちです。予算が足りない場合は、キッチンや内装、設備、家具などを優先して、断熱など見えないところの予算を削る傾向があります。しかしそれはお勧めできません。家具やキッチンは後から追加したり、リフォームしたりすることが比較的容易ですが、断熱は後から追加するのが簡単ではないからです。

私はよく「断熱は裏切らない」と言っています。どこかで聞いたようなフレーズですが、筋力トレーニングと同様に、断熱もやればやった分だけ効果が感じられるようになります。断熱・気密は目に見えないので、初期費用の支出をためらう気持ちはわかります。

でも、住宅を建てる最初の段階でしっかり投資することで、ランニングコストを長期にわたり削減してくれる、ありがたい存在に変わるのです。