住宅の室温と健康には深い関係がある。ノンフィクションライターの高橋真樹さんは「室温が低い住宅に住んでいる人は、健康寿命が4年縮まるという研究がある。健康を守るためには室温を18℃以上に保つことを意識したほうがいい」という――。

※本稿は、高橋真樹『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

部屋のラジエーターで体を温める
写真=iStock.com/elenaleonova
※写真はイメージです

断熱性能と健康には深い関係がある

本稿では、家の断熱性能と健康との関係を見ていきます。まずは夏の熱中症についてです。

最近の夏は記録的な猛暑が続き、熱中症で救急搬送される方が増えています。そのうち、もっとも多いのが自宅で熱中症になるケースで、毎年およそ4割を占めています。また、6割前後が65歳以上の高齢者です。熱中症で亡くなった高齢者のほとんどが、エアコンをつけていなかったことも指摘されています。

自宅でエアコンをつけずに倒れる高齢者が多い理由として、エアコンが贅沢品だと感じる意識や、体温調節機能の衰えにより暑さが感じにくくなることのほか、光熱費を気にしてがまんする傾向もあるとされています。しかし、家の断熱性能が高ければ、エアコンを使用しても消費するエネルギーはわずかで済みます。住宅の断熱性能がきちんとしていれば、この方たちは倒れたり亡くなったりせずに済んだのではないでしょうか。

次に、冬の健康問題について考えていきます。最近は、夏の熱中症に注目が集まりがちですが、実は夏と冬とでは、気温の影響で亡くなる人の数は、冬のほうが圧倒的に多くなっています。熱中症も危険ですが、早めに対処すれば助かる可能性は高まります。一方で冬は、寒さの影響でさまざまな疾患が重症化しやすくなります。