寒さで亡くなる人が少ないのは北海道

日本での死因の1位はがん(悪性新生物、24.6%)です。2位は心疾患、3位は老衰、4位が脳血管系疾患です(厚生労働省、2022年)。寒さの影響を受けやすいのは、心疾患と脳血管系疾患で、いずれも血液の循環に関係する病気(循環器系疾患)です。この2つを合わせると、死因の21.6%にのぼります。

また、介護が必要になった人の割合では、循環器系疾患は認知症を上回り、1位となっています。さらに医療費別では、循環器系疾患は、がんを上回り6兆円を超えています。循環器系疾患の増加は、患者や家族が苦しむだけでなく、医療費や介護費などの社会保障費を押し上げ、国民の負担となっています。

全国の都道府県で、冬に家の中の寒暖差で亡くなる人の割合が多いのは、どこでしょうか。図表1は、暖かい季節に対して寒い季節に、月平均死亡者の割合がどれくらい増えるかを示したものです。

【図表1】冬季死亡増加率の比較(上位3県と下位3県)
冬季死亡増加率の比較(上位3県と下位3県)(出所=『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』)

47都道府県を並べて、トップ3とワースト3を抜き出しています。もっとも割合が少ないのが、寒いはずの北海道です。逆に、亡くなる割合がもっとも多いのは、北海道に比べて温暖なはずの栃木県です。栃木県は、北海道に比べ、倍以上も冬季死亡増加率が高くなっています。

断熱された住宅が多い地域ほど死亡率が低い

ワースト10まで広げると、愛媛や鹿児島、静岡、熊本など、暖かい印象のある四国や九州の県が入ります(厚生労働省「人口動態統計」、14年)。確かに平均気温だけで見れば、四国や九州は温暖です。しかし、冬季の朝晩はぐっと気温が下がり、家の中が危険な寒さになることも少なくありません。この寒暖差が、リスクをもたらしています。

都道府県別の冬季死亡増加率と、断熱された住宅の普及率には、相関関係があります。断熱された住宅が多い地域ほど、冬季死亡増加率が低いことがわかったのです。総務省が作成した高断熱住宅の普及率を都道府県別に比較する地図が作成されたのは、08年のことです。

当時言われていた「高断熱住宅」のレベルは、内窓やペアガラスの窓が基準なので、それほど断熱性能が高い住宅とは言えません。それでも、住宅の断熱性能と健康とが関係していることが示されました。

断熱された住宅と冬季死亡増加率の相関関係の高い関東や四国、九州などでは、内窓やペアガラスは普及していませんでした(08年当時)。これは個人が気をつけるべき問題というよりも、地域・行政レベルで「自分たちの住む地域は暖かい」と錯覚し、断熱対策をおろそかにしてきたことが、冬季死亡増加率を高めてしまった原因につながっていると考えられます。