住宅性能の低さは国内経済に悪影響を与えている

これまで日本の住宅産業は、安くて質の悪い住宅をたくさん建てては壊し、また新築するというスクラップ&ビルドのモデルで商売をしてきました。しかし人口減少時代のいま、それが立ち行かなくなってきています。日本でも、燃費性能が良く、一度建てたら長く使い続けられる質の高い住宅を増やす必要があるのです。

日本の住宅の性能の低さは、国レベルでの経済的な損失にもつながっています。日本のエネルギー自給率はわずか13.4%(2021年)です。また電力に限っても、自然エネルギーの割合は20.3%にすぎません。この他のエネルギーは、海外から輸入しています。

金額にすると18年の化石燃料の輸入額は19.3兆円です。この時点でも、日本の全輸入額の4分の1ほどを占めています。さらに円安と化石燃料の高騰が進んだ22年には、約33.5兆円と跳ね上がりました。この年の日本の貿易収支は21.7兆円ほどの赤字です。エネルギーに支払うお金のために、日本の貿易は赤字になっているのです。

火力発電所
写真=iStock.com/KIMASA
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この33.5兆円を、日本の全世帯(5431万)で単純に割ると、1世帯あたりの負担額は、なんと61.7万円にもなります。光熱費としてだけでなく、エネルギーは私たちの暮らしに関わるすべての事業に関わっています。そのためこの金額が、薄く広くさまざまな生活物資やサービスに付加されています。しかもこのお金で買ったエネルギーは、燃えてなくなっているのです。

車や家電は高性能なのだが…

20年に、日本が化石燃料を輸入した国のリストを見ると、原油では、サウジアラビアをはじめ、湾岸産油国が上位となっています。これらの国々の多くでは、人権侵害や王族による財政の私物化などが指摘されています。また天然ガスや石炭では、ウクライナに軍事侵攻をすることになるロシアが上位に入っていました。

すでに経済的に豊かとは言えない日本のお金を、こうした国々に流し続けていてよいのでしょうか。そして、大金を払って輸入したエネルギーを、国レベルで穴の空いたバケツから捨てている現状は、あまりにもったいないことです。

日本の住宅の温熱環境についてまとめます。日本の住宅は、国際的な断熱基準にまったく満たない、夏は暑く、冬は寒く、結露が当たり前の環境です。それにより、冬に交通事故を上回る人が亡くなるなど、健康被害が出ています。また、エネルギーのロスが多く、光熱費などのランニングコストが高くつくという、経済的な損失を生じさせています。

日本は先進国で、国際的に自動車や家電の性能が高く評価されてきました。そのため住宅も、漠然と性能が良いと考える人が多かったかもしれません。しかし、車や家電とは大きく異なる点があります。住宅は輸出されないため、国際競争にさらされる機会がなく、閉じた市場の中で性能とは別の部分で業者が競ってきました。