「言えるけど言わない」のではなく「言いたいけど言えない」

大人は「言えるけど言わない」ができます。しかし、子どもは「言いたいけど言えない」のです。もし、子どもから言葉が返ってこなかったら、「話さないとわからないよ?」と子どもの言葉をせかすのではなく、「話せないの、つらいよね」と共感しながら子どもの言葉を待ってみましょう。

そして、子どもが自分の思いや感情を言葉にすることができたときは、その言葉を否定せずに受け止めてあげてください。そうすることで、子どもは「自分の言葉には価値がある」と実感し、「言葉で伝えるって大切なんだな」と思えるようになるのです。

誰かに話しかけるのは子どもにとって勇気がいる

子どもの話を聞く上で、傾聴力が大切なのは言わずもがなです。しかし、傾聴力だけでは子どもの話を聞くことはできません。なぜなら、子どもの話を聞く場面をつくらなければ、子どもの話を聞けないからです。だからこそ私は、「子どもの話を聞きに行く力」が大切だと思うのです。

子どもにとって、「誰かに話しかける」って結構勇気が必要なことです。大人と違い、誰かに声をかけたり相談してきた経験が少ないので、たとえそれが親相手であったとしても、「今忙しくないかな?」「こんなこと話しても大丈夫かな?」と、自分から話しかけることに躊躇しやすい面があります。そんな背景があるからこそ、大人のほうからも子どものところに行って、声をかけてほしいのです。

では、子どもの話を聞く場面を多くつくり、子どもの話を聞きに行く力を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか。

私のおすすめは「子どもの得意分野について本気で質問する」という方法です。「絵を上手く描きたくて」、「サメの弱点を知りたいんだけど……」のような感じで、子どもが得意としていることに関して本気で質問や相談をし、会話のきっかけをつくるのです。その中で、子どもの困り事をさりげなく聞いてみるのもよいでしょう。ただし、強引に子どもの話を聞き出そうとするのは避けてください。私たち大人と同じように、子どもだって話したくないときはありますので、子どもから「話したくない」と言われたら、潔く身を引きます。

このように、子どもの話を聞く力には、「子どもの話を積極的に聞きに行く力」が含まれます。「子どもの話をどうやって聞こう」を考えることと同じくらい、「子どもの話をどうやって聞きに行こう」と考えることが重要なのです。