精神医学やカウンセリングの本は読まないほうがいい
本書をお読みくださっているみなさまにはまことに申し訳ないのですが、実をいうと、本書のような内容の本は読まないほうがいいかもしれません。自分の悩みを解決しようとして、心理学やカウンセリングの本を読んでいると、さらに悩みが増えてしまう、という皮肉な現象が起きることもあるからです。
医学生症候群、あるいはインターン症候群という用語があります。医学部の学生は、いろいろな病気とその症状を学ぶわけですが、医学的な知識が増えるたびに、「ひょっとして自分もこの症状に当てはまっているのではないか?」と感じるようになり、健康であっても、なぜか自信が持てなくなってくるのです。これが医学生症候群です。
サウジアラビアにあるタイフ大学のサミヤー・アルサガフィは、医学部の学生195人と、他学部の学生200人を比較したところ、医学部の学生のほうが、自分が糖尿病になってしまうリスク、高血圧になるリスク、頭痛が起きるリスク、ガンになるリスクなどを高く見積もることを明らかにしています。
ヘタに知識が増えると、悩みも増えてしまうということがあるのです。心理学の本についても同様。知識がなければ悩むこともないのですが、中途半端に知識を得てしまったために、「私は“社交不安障害”ではないのか?」とか、「私は“自己臭症”なのでは?」と余計な心配ごとを抱え込んでしまうことはよくあります。
余計な悩みが増えるくらいなら、いっそのこと本など読まないほうがよい、ということもあるのです。
本書では、「どうすれば悩みをなくせるのか?」という具体的、実践的な解決法をご紹介しているので、悩みが増えるというより、むしろ「なるほど、こうすればいいのか」という指針が得られると思います。
けれども、あまり他の人の本の悪口は言いたくありませんが、不安を煽るだけ煽って、それでいて何の解決策も教えてくれない本もうんざりするほどたくさんあります。そういう本はできるだけ読まないようにしたほうがいいかもしれません。
私は小学生の頃に、ノストラダムスの大予言に関する本を読み、「人類はもうすぐ絶滅するのだ」と思い込んで、布団の中で震えていた思い出があります。おかしな本を読むと、不安ばかりが高まってしまうので、そういう本はできるだけ避けたほうがいいでしょう。