「私は絶対に結婚できない」強く訴えていた

多忙で家をあけている父親にかわり、子育てを一手に引き受けていたのが、専業主婦のお母さんでした。非常に熱心な教育ママで、幼い頃から複数の習い事や塾を掛け持ちし、そのおかげで、彼女も有名大学へと進学。母の口癖は、「あんたにはお金も時間もかけていい大学まで出させてやったんだ」。続く言葉は、「だから、親にお返しするのは当たり前だ」。里中さんは、この言葉に縛られ続けてきたと言います。また、過去には結婚寸前まで話が進んでいたパートナーがいたそうですが、母親が相手を気に入らず、無理やり別れさせられたこともあったと話してくれました。

花束と一対の結婚指輪
写真=iStock.com/Davizro
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「私は絶対に結婚できない」と強く訴えていたことや、彼女の安定した収入に反して漂う悲愴ひそう感の原因が垣間見えた気がしました。里中さんが私のもとに来たのは老後資金への不安からでしたが、住居費が安く抑えられているとはいえ、当時の貯金額は300万円。彼女の稼ぎや慎ましい生活からすると物足りない金額でした。間違いなく、「仕送り8万円」が老後資金を貯める上で大きな弊害になっていたのです。

司法書士を加えた話し合いの場を持つことを提案

今回のケースの場合、お金が貯まらない原因は「母への仕送り」という一点ではっきりしていますので、仕送りを辞めるなり減額するなりといった対処が即、改善につながります。私は、里中さんに私がお母さんの家計の見直しをすることと、司法書士も加えたかたちでお母さんとの話し合いの場を持つことを提案しました。

ファイナンシャルプランナーがそこまでするの? と思われるかもしれませんが、お金にまつわる問題で、弁護士や司法書士、税理士といった士業の方と連携をとることはよくあることです。

また、里中さんのように根が真面目で優等生タイプの方ほど、支配関係の影響を受けやすく、問題を一人で抱え込みがちです。家庭内の問題を他人に明かすことを恥のように感じる方も多いので、黙って耐えてしまう。そんな時、ファイナンシャルプランナーでもなんでもいいので、第三者に話してみると、専門機関につないでもらえる可能性があります。心身に支障をきたすことも多いですが、メンタルクリニックに抵抗を覚えることもあるでしょうから、むしろ、お金の問題を入り口にしてくださる方が、心の負担が軽い場合もあるのではないでしょうか。

里中さんと似たケースで、親に月収の半分を取られていた女性がいました。その方は手取りで月50万円をもらっている高給取りの方で、その半分、25万円を親に送っていたおかげで人生をまったく楽しめずにいましたが、結果的には、司法書士のアドバイスで仕送りを止めることができました。

※そもそも1年間で110万円を超えた仕送りをした場合、そのお金が生活費に使われておらず、貯蓄や投資に使ったり、遊興費や生活費の範疇を超えた贅沢品などに使われている場合、贈与税がかかります。