上司からの差し戻しが74%減り、営業の成約率は22%アップ
この確認作業は「フィードフォワード」と呼ばれています。
でき上がったものに対して意見を聞くのが「フィードバック」であり、完成前に感想を聞いて確認するのがフィードフォワードです。
報告書や議事録などの社内文書であれば、提出先は上司になりますから、作業が20%くらい進んだら、上司のチェックを受けます。
提案書などの社外向けの文書の場合は、上司の確認の後に、提出先企業の担当者に確認を求めます。
この確認作業によって、「もっとデータを入れてくれ」とか、「グラフを増やしてほしい」、「できるだけページ数を減らしたい」などの意見が得られますから、それを反映させて文書を完成させれば、後からムダな修正をしなくて済むのです。
このフィードフォワードの作業を1万9000人のビジネスパーソンで行動実験したところ、上司からの差し戻しが「74%」減っています。
20代の若手社員に限定すると、「89%」も差し戻しが減少したのです。
提出先が取引先の企業である場合には、営業の成約率が「22%」上がっていますから、フィードフォワードは極めて効果の高いテクニックといえます。
ダメな上司やチームリーダーほど、指示の出し方が曖昧
フィードフォワードとは、作業完了後ではなく、途中の段階で相手と「イメージ合わせ」をしておくことです。
作成する文書に対して、上司や取引先の担当者と思惑が異なることもありますから、「こんな感じで進めていますが、イメージは合っていますか?」と確認しておくことで、先に「正解イメージ」を知ることができます。
相手の要望を事前に把握できれば、差し戻しのリスクを回避したり、ムダな作業を省くことができるのです。
ダメな上司やチームリーダーほど、指示の出し方が曖昧です。
「わかりやすい資料を作れ」という漠然とした指示だけでは、どんな資料を作ればいいのかわからず、不安を抱えたまま作業をすることになります。
ダメな上司ほど、「あれ」、「これ」、「それ」、「どれ」などの不明瞭な指示代名詞を使いがちですから、早い段階でイメージを確認しておかないと、時間をかけて不必要に豪華な資料を作ることになります。
仕事の差し戻しというのは、上司にとっても、部下にとっても不幸なことです。
また一から作業をやり直す部下の負担はもちろんですが、終業時間の間際に差し戻しを命じることは、上司にとって相当な精神的負担になります。
管理職が取り扱う情報量は、10年前と比べて2倍から3倍も増えており、確認すべきメールやチャットや資料、文書は膨大な量になっています。
早い段階のフィードフォワードは、上司の負担を軽くすることでもあります。
大事なポイントは、作業を始める前に、「進捗20%くらいの段階で、1分だけチェックしてもらってよろしいですか?」と確認をとっておくことです。
事前に報告しておけば、上司の方も、「あの資料はどうなっているんだ?」と余計なマイクロマネジメントをしなくて済みます。
「進捗20%」→「1分だけチェック」であれば、お互いの行動ハードルが下がり、精神的な負担も軽くなるため、初速を早くすることに役立ちます。