これから始める作業の「戦略」と「戦術」を明確化する
資料というのは、それを作成することが目的ではなく、作った資料で「相手をどう動かすか?」が一番の目的です。
その目的には、大きく分けて3つあります。
②「決定」を促す
③「協力」を得る
作成した資料によって、誰にどう動いてもらいたいのか?
資料を作る際には、目的を事前に把握してから、動き出すことが重要です。
私の会社では、この確認作業を「事後行動デザイン」と呼んでいます。
資料には、相手との「情報共有」という意味合いもありますが、そこで踏み留まったのでは、あまり効果は期待できません。
大事なのは、その共有した情報によって、「どうしてほしいのか?」を伝えることですから、先に事後行動デザインを設計しておかなければ、相手を動かすことはできないと考える必要があります。
成果を出し続けている人は、上司から仕事を受けたときに、「この提案資料は、本部長に決定してもらうことが目的ですよね?」と先にゴール地点をすり合わせています。
資料を作る目的を事前に把握しておけば、「そのためには、こんなデータが必要だ」とか、「こういう図表を入れなければ、理解を得られない」など、これから始める作業の「戦略」と「戦術」が明確になります。
「誰に対する、どんな目的の資料か?」を知らずに作業を進めると、独りよがりな内容になって、その効果を得られない確率が高くなります。
見当違いな方向に走ったり、余計な作業に追われてしまうのは、事後行動デザインを設計していないことに理由があります。
資料作成を依頼されたら、「この資料の目的は、こういうことですよね?」、「相手をこう動かせばいいんですよね」と確認しておけば、ムダな作業をカットして、初速を早めることができます。
成果を出し続けている人のほとんどは2色で資料を作成する理由
社内会議や取引先に対するプレゼンなど、スライドを作成する機会が多くなっていますが、「どのくらいの枚数を作るか?」は難しい問題です。
その昔は「1スライド、1ストーリー」が鉄則でしたから、自社プロダクトのストーリーを伝えるために、多くのスライドを準備することが当然とされてきましたが、あまりにも長いスライドは、逆に迷惑と受け取られる傾向にあります。
現代では、「1分あたり1スライド」が主流になっていますが、企業の意思決定者826人にヒアリング調査をしたところ、「スライドの枚数と時間を、もっと減らしてほしい」という回答が78%もありました。
「スライドの時間が長すぎる」と答えた意思決定者に、理想的な時間を聞いてみた結果、その平均時間は「持ち時間×0.75枚」であることがわかりました。
持ち時間が20分であれば、これまでは20枚前後のスライドを用意するのが一般的でしたが、現代のビジネスでは、「20分×0.75枚」=15枚が適正ということです。
適正なスライド枚数を知っておけば、取引先に誠意を示すために、ムダに多くのスライドを作る必要がなくなり、作成枚数で悩むこともなくなります。
「このスライドは15枚で作ればいいんだな」とわかっていれば、それに合わせてコンテンツを用意すればいいのですから、自然と作業が早く進みます。
私の会社では、資料作成術についても、さまざまな行動実験を繰り返していますが、「コンパクトな資料の方が、人を動かしやすい」ことがわかっています。
効果的な資料には、3色以内のものが多く、成果を出し続けている人のほとんどは2色で資料を作成しています。
時間と労力を注いで7色も使ったカラフルな円グラフを作っても、それで人が動くことはまずありません。
資料を作る際には、カラーでごまかさないことも大事なポイントです。