押さえておきたい古典と名著

戦略論の祖ポーターの理論は、戦略を語るうえで必ず押さえたい。ポーターに対し、経営資源に基づく資源ベース論を唱えたのがハメルとプラハラード。同じく帰納法的アプローチから戦略のあり方に迫ったのがピーターズらだ。

『競争の戦略』M.E. ポーター

経営はサイエンスであるという考え方のもと、企業戦略と産業経済学を融合。業界の収益性を決める「5フォース(5つの競争要因)」を定義することで業界構造を分析。不完全競争を創出し、競争優位な状況をつくり出すことによる利潤最大化を提唱した。分析派の代表的論者による戦略論の必読書。

『コア・コンピタンス経営』G. ハメル&C.K. プラハラード

現実から普遍を紡ぐ帰納法的分析アプローチにより、コア・コンピテンシー=「独自の強み」との概念を提示。目先の利益にとらわれることなく、独自の競争能力(コア・コンピタンス)を中心とした未来志向の戦略立案・実行が企業にとり競争優位の条件と説く。

『エクセレント・カンパニー 超優良企業の条件』T. ピーターズ&R. ウォーターマン

アンチ分析派の代表作。超優良企業43社を帰納法的に調査することで、共通項を抽出。人間とは不合理な存在であることを前提に、「歩き回る経営」、実験精神、顧客への密着、文化や価値観に基づく実践知を重視、「行動の重視」を第一とする8原則を提示した。

「いま」を知るために

最新の流れを理解するにはアンチ分析派の2作、コリンズとミンツバーグは必読。彼らの理論の実践事例として、いま最適なのがジョブズだ。余裕と興味があれば、全米ベストセラーのゴールドマンとグラッドウェルがオススメ。

『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』J.C. コリンズ

偉大な企業へと変貌を遂げた11社を同業界の競合と比較分析。彼らに共通するのは謙虚なリーダーシップや不屈の精神であった。古代ギリシャの「ハリネズミとキツネ」の寓話を引き、多くを知るキツネではなく重大なことを1つ知るハリネズミとなるべきと説く。

『MBAが会社を滅ぼす』H. ミンツバーグ

経営とはサイエンス、アートおよびクラフトの適度なブレンドであるとの立場から米国流のMBA教育を批判、数値管理やテクニックだけを教えるMBAは時代遅れと一刀両断した。マネジメント教育は現場で実践を積んだ人材の再教育の場であるべきと強調する。

『第1感』M. グラッドウェル

副題は「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい。ハイテクを駆使して本物と認定された古代ギリシャの彫刻が、じつはニセモノだった。瞬間のひらめきが持つ力、少しの情報で本質を見抜く直感力、さらには論理的な思考がいかに洞察力を損なうかを、取材による事例と心理学の実験データから解き明かす。

『SQ 生き方の知能指数』D. ゴールマン

脳科学の研究により、ミラー・ニューロンなどの神経回路が対人関係や社会性に影響を及ぼすことがわかってきた。EQをさらに広げた「SQ」=「社会性の知能指数」という概念を唱え、新たな知の創造を呼び起こすための他者との相互作用のあり方を論じている。

『スティーブ・ジョブズの流儀』L. ケイニー

アップルコンピュータの創立者であり、iPodやiPhoneにより世界中を席巻したジョブズ。人を魅了するカリスマ性の背後にある情熱や、卓越性のあくなき追求など、その徹底した経営哲学と言動から得られる教訓が列挙され、カリスマ経営者を知るのに最適な一冊。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=山下知志 撮影=若杉憲司)
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