明らかに女性をターゲットにした業界は別だが、基本的な顧客像を男性に想定する商品やサービスは多い。しかしこれからは「女性こそ我々のお客様だ」と思ったほうがいい。なぜならまもなく「女性があらゆる消費の決定権を握る時代」になるからである。『ウーマン・エコノミー』の監訳者の一人、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の津坂美樹氏によれば「すでに世界の消費の64%を女性が支配している」という。女性の社会進出は長期的なムーブメントだが、この不況がそれを後押しした。職を失った男性に代わり女性が働き始めたのだ。
いま女性が財布のヒモを握る個人消費支出は世界全体で2000兆円だが、数年後には2800兆円になり、同じく総所得は1200兆円から1800兆円に拡大すると見込まれる。BRICsの経済規模を上回るのだ。
「外国の経済成長に期待しなくても、身近な女性たちがビジネスチャンスを秘めているということです」(津坂氏)
そこで女性を理解するのに役に立つのが本書である。世界中の女性1万2000人のデータベースから、男性の知らない実態を洗い出した。
「女性はみんな買い物に出かけることが大好きだと思っていませんか。たしかにその傾向はある。でもどんなときもそうだとは限らないんです」
津坂氏は出産したばかりの女性を例に挙げる。赤ちゃんの世話に追われる女性にとっては、ショッピングなど「冗談じゃない」。そんな時間があったら、女友達と積もる話をしてストレスを発散したい。だからこそ、ネットで買えるベビー服のオンラインショップが急成長しているのだ。このように女性の気持ちに寄り添ってみるだけで、改善点や進むべき道が見えてくる。
「誤解してほしくないのは、私たちは男性を攻撃しているわけではないということ。ビジネス・リアリティとして、女性を理解することがすなわち利益に結びつくということです」(津坂氏)