テクニックに頼りすぎたらプレゼンは上達しない

もう1つの話法のほうは、要は喋りがうまいか下手かということだ。

同じく、この話法をさらに分解していくと、「スライドの説明方法」「話のつなぎ方」「聞いている人とのインタラクションの仕方」、その他いろいろとなって、こちらはパッケージに比べてグンと要素が多くなってくる。

さらに、その要素それぞれにいちいち細かなテクニックがある。

スライドの説明方法を例にとると、その場でアンダーラインを入れてみるといい(「線を引く」)とか、たとえば「今日は、いいたいことが三つあります」(「先に項目数をいう」)といって話しはじめるといい、といった具合である。

したがって、プレゼンがうまくなるためには、図表1に示した要素やテクニックをキチンと一つひとつ習得していけばいい。気の利いた冗談の一つも交えてウケを狙う。

ときには聞き手に何か質問してみるのも変化がついていい。大聴衆が相手のプレゼンだったら、お客さんたちに「こういう方いらっしゃいますか」と投げかけて、手を上げさせるのも1つのテクニックだ――。

と、私は、そんなことをいいたいのではない。

逆である。

プレゼンが下手な人にいきなり「ここでこんな冗談を入れるといいよ」「手を上げさせると客が参加意識を持つからいいんだ」などと、部分的な細かいテクニックを一つひとつ教えたってダメなのだ。アドバイスそのものとしては正しいが、プレゼン全体はちっとも上達しない。

だいいち、覚えなくてはならないことが多すぎて、肝心のヤル気が萎えてしまう。

では、どうすればいいのか。

跳び箱を跳べない子に「助走」「踏み切り」「手をつく位置」などとステップを分解して、いちいちテクニックを教えるのは利口なやり方ではない。

正解は、肝心なコツだけを教える、だったはずである。

プレゼンの極意は「声を大きく」

プレゼン上達法も同じで、最初からたくさんのことを教えすぎたら、かえって混乱してしまうだけだ。

教えるのは、次の3つだけでいい。

①声を大きく
②スライドを見ない
③テンポを変える

これは私の経験上から導いたごく私的なコツだ。もちろん本邦初公開。

両腕で体重を支える感覚を教えると9割方の子どもが跳び箱を跳べるようになるのと同様、この3つを教えると9割まではいかなくとも、ほぼ8割方の新入社員はアッという間にプレゼンがうまくなってしまうのである。

決して私の大風呂敷じゃなくて、ホントにホントなのだ。

そんなウマイ話があるもんかと、にわかには信じられない人もいるだろうから、ちょっと説明を加えておこう。

①に従って声を大きくすると、実はこれだけでもう、プレゼンはかなりよくなる。なぜなら、大きく発声すると、声にハリが出るのだ。ハリのある声で喋ると、聞く人に意思がよく伝わるようになって、説得力が出てくる。

ただし、「がなり立てろ」というのではなくて、肝心なのは声のハリのほうだ。教えるときは、いきなり声のハリといってもわからないから、ごくシンプルに「声を大きく」というようにしている。

メガホンを使用してプロモーションする男性実業家
写真=iStock.com/airdone
※写真はイメージです

②もそうで、逆にいうと「聞き手のほうを見ろ」ということである。これには2つの意味がある。

1つに、視線が聞き手のほうを向いていると、そうでないときに比べて格段の信頼感が出て、同じことをいってもグンと説得力が増す。

そしてもう1つ。聞き手のほうを向いていれば、ウケているかいないかみんなの反応がわかるから、場合によっては途中で軌道修正ができる。

これも教えるときにはシンプルに、スライドを見て話せば楽かもしれないが、あえて「スライドを見ないように」といい、それを守らせることで、あとは結果として自分で自然に悪いところ、足りないところに気づいて改善していってもらう。

また、よほど周囲のムードに鈍感な人でない限りは、この②を守っていれば、イヤでも自分のプレゼンの欠点に気がつくし、それによって自ずと改善されていくものなのだ。

ここまでで、だいたいみんなかなりのところまで上達してくれる。