コツとは「複雑」ではなく「単純」なもの

最後に③のテンポ。これは3つのコツの中では、やや難しい。

単調に喋っていると、やっぱりどうしても聞き手が飽きてしまう。だから、「テンポを変える」ことで話にメリハリをつけろ、と教えるわけである。

もっとも、これにもやはり二重の意味がある。

まず、テンポを変えようと心がけると、自分がいちばんいいたいことはこれで、こっちはそれに対するつけたしの説明だといったことが、頭の中ではっきり整理されてくるのだ。

自分がいまから話す内容が頭の中ではっきり整理できていれば、強調したいところ、軽く流すほうがいいところがわかり、話し方に自ずとメリハリがつく。それに応じて、話すテンポも変わってくることになる、というわけだ。

この3つ目までできれば、もう誰もプレゼンなんか怖くない、のである。

古谷昇『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』(PHP研究所)
古谷昇『コンサル0年目の教科書 誰も教えてくれない最速で一流になる方法』(PHP研究所)

以上、3つのコツは一見あまり意味もなさそうな、単純かつ現象論的なことだが、その裏には非常に本質論的な意味合いが隠されているのだ。

つまり、この3つを徹底させると、プレゼンの内容は事前に頭に叩き込んでおけとか、話しながら客の反応をよく見ろなどと、その他いろいろをいちいちうるさくいわないですむ。

「声を大きく」「スライドを見ない」「テンポを変える」の3つだけを教えておいて、あとは本人が数回のプレゼンを経験すれば、自然に身についてしまうのだ。

もともと、あまり複雑なやり方はコツとはいわない。この種の誰にでもできる単純なものを称してコツと呼ぶのである。

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