BYD、テスラ…“EV専業”の成長がめざましい
2023年、世界の自動車市場は車載用半導体供給の正常化、米国の個人消費の強さ、EVシフトの加速などを背景に全体として成長した。ただ、日米欧の主要メーカーは、為替レートの変化、ストライキ、EV開発費の負担増などで業績が分かれた。注目されるのは、BYDやテスラのようなEV専業メーカーの成長は加速したことだ。
2023年4月~9月期、トヨタ自動車は増収増益を達成した。円安の影響は大きかった。世界販売は前年同期比9%増の517万台、電気自動車(EV)は約5万9000台だった。4年連続でトヨタは販売台数世界1位を守ったようだ。
一方、2023年1月~9月期、独フォルクスワーゲンの売上高は増えたが、営業収益が前年同期の実績を下回った。主たる要因は、EVの開発・製造コストの上昇だ。不動産バブル崩壊による中国経済の減速も大きかった。足元で欧州の自動車メーカーは、人員削減などリストラを進めつつ、中国のEVメーカーに出資するなど収益力を立て直そうとしている。
中国メーカーは約500社→100社前後に激減
9月、米国では全米自動車労組(UAW)のストライキが起きた。それは、GMとフォードの業績懸念を高めた。10月下旬、GMとフォードは、ストライキによる生産の減少などを理由に通期の業績見通しを撤回した。EVや自動運転技術の開発費用増加も収益を圧迫した。
一方、中国や欧米を中心に“EVシフト”は加速した。特に、BYDなど中国主要メーカーの成長は目覚ましい。2023年7~9月期、米テスラの世界販売台数は43万5059台、BYDは43万1603台で差は3456台に縮小した。2023年10~12月期にBYDはテスラを上回る世界最大のEVメーカーになる見通しだ。中国の上海汽車集団、吉利控股集団(ジーリー)も成長が著しい。
そうした状況下、中国では破綻するEVメーカーも急増した。2019年に約500あったEVメーカーは、2023年夏場に100社前後に減少したとの報道もある。販売補助金の削減、製造技術面の未熟さなどは重要なファクターだ。そうしたEVの負の部分はあるものの、高スペックのEVをより低価格でより迅速に開発し、世界トップシェアを獲得する中国EVメーカーの野心は手ごわい。
現状、中国はEV(完成品)、バッテリー、駆動装置、セパレーターなどの部材・部品の分野で競争を優位に進めている。その結果、2023年、EV輸出台数の増加によって中国はわが国を抜き、世界第1位の自動車輸出国に成長した。