収入は月20万円、支出16万円だが…いつまで働けるか

現在は、母親のパート収入が月6万円、これに母親の年金と遺族年金が計14万円で、合わせて月20万円。一方、支出は16万円で、貯蓄が1200万円あり、持ち家で住む場所には困りません。ただ、今後、66歳の母親がいつまで働けるのか、また母親の死後、残された長女がひとりで生活していけるのか……。

母親は大きなため息をつきました。表情は暗く、疲労の色も見受けられます。大まかな状況がつかめた筆者は母親に質問をしてみました。

「障害年金を請求するためには医師の書く診断書が必ず必要になります。診断書を書いてもらうためには医師による診療を受けなければなりません。ご長女様は外出が難しいとのことですが、医師に診療してもらうこと自体は拒否していないのでしょうか?」

「長女に聞いてみないと分かりませんが……。それが通院と何か関係があるのでしょうか?」

「医師の診療を拒んでいないようであれば、自宅まで来てもらえる訪問診療が検討できるからです。訪問診療であれば、ご長女様が外に出ることなくご自宅で診療を受けられますし、診断書も書いてもらえます。新型コロナ発生以降、訪問診療をする医療機関も増えているようなので、検討の余地はあると思います」

「そのような方法があるのですね! 知りませんでした。もし長女が障害年金を受給できたとすると、金額はどのくらいになるのでしょうか?」

「そのためにはいくつかご確認させていただくことがあります」

筆者はそう言い、母親から長女の年金加入状況を聞き取ることにしました。

長女が初めて病院を受診した日は30歳の頃で国民年金に加入中。長女の国民年金は父親の生前までは保険料を納付しており、父親が死亡した後は免除の手続きをしたとのこと。以上のことから、長女は障害基礎年金を請求することになり、金額は次の通りになります。

■障害基礎年金の2級に該当した場合(月額換算)
障害基礎年金2級 6万6250円
障害年金生活者支援給付金 5140円
合計 7万1390円

■障害基礎年金の1級に該当した場合(月額換算)
障害基礎年金1級 8万2812円
障害年金生活者支援給付金 6425円
合計 8万9237円
※いずれも令和5年度の金額

金額の説明をした後、筆者は母親に言いました。

「まずはお母様からご長女様に訪問診療のお話をしていただき、ご長女様の同意を得るところから始めてみましょう。同意が得られたら、訪問診療先を探すことにいたしましょう」
「わかりました。長女にも話してみます」

母親は力強くうなずきました。

ベッドに横たわる女性
写真=iStock.com/Marjot
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