次の問題は「難民の家族」をどこまで呼び寄せるべきか

現在、もう一つの大きな問題となっているのが、難民の「家族の呼び寄せ」である。2015年と16年にやってきた120万人以上の中東難民のうち、正式に難民と認定された人たちの家族の呼び寄せが、19年から始まっている。しかも、最初、年間1000人と言われていたそれが、なぜかどんどん増え、家族ビザの発行数が、今年はおそらく12万件に到達するとみられる。

ドイツの法律では、なんびとも家族と共に暮らす権利を有し、それはたとえ不法難民でも同じであるというのが社民党の論理だ。だから党大会では、暫定的に滞在を容認されている人たちにも、家族の呼び寄せを認めるべきだということが主張された。

ただ、中東の人たちは子沢山なので、妻と子供が来れば、難民の数は容易に5倍ぐらいに膨らむ。しかも、妻が2人いる場合もあり、ドイツ政府はそれをどうするかで窮しているが、目下のところ2人とも入れているという(ドイツは本来は一夫一婦制)。

難民だけで中都市がいくつかできてしまうほど

なぜ、多くの人が、難民資格がないのにドイツでの仮の滞在を許可されているかというと、さまざまな理由がある。難民がパスポートを持たず母国が特定できないとか、母国がそもそも受け入れないというケースも多い。

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ただ、社民党は元々、難民資格のない人の母国送還の厳格な遂行にも一貫して反対している。人権が保障されていない国に、例えば、強盗殺人を犯した人間、あるいは同性愛の人間を送り返したら、死刑になってしまうかもしれない。死刑は非人道の最たるものであり、法治国家ドイツは、そんなところに人を送り込んではいけないというのが、彼らの論理だ。

現実として、世界には人権が完全に守られている法治国家などあまりない。だから、社民党左派の理屈でいけば、世界中の多くの住民が、ドイツに庇護を求める理由を見つけられる。

さらに社民党は今回の党大会で、地中海での難民救助の支援を続けることも表明した(NGOの“難民救助”は、難民から大金を巻き上げて密航を幇助している犯罪組織との協働作業であるとして、EUでは強く非難されている)。

要するに、それら党内左派の主張に圧倒されたのが、今回の社民党大会だった。