口呼吸だと深呼吸をしても意味がない

緊張をほぐすために深呼吸をすることはありませんか? もし深呼吸するときに、口で呼吸していて、お腹がふくらんだりへこんだりせずに、肩や胸ばかりが動いていたら、それは間違った深呼吸です。

深呼吸は空気をたくさん取り込むため、一見体によさそうに思えますが、間違った深呼吸は逆に酸素のとりすぎになり、体の隅々にまで酸素を行きわたらせることができません。

呼吸は吸うよりも吐くほうがより重要です。たとえ深呼吸をしても浅い口呼吸がクセになっていると息を吐ききることができないので、肺の中には空気が残ってしまいます。見かけは深呼吸なのに、肺の一番深くまで空気を届けられない浅い口呼吸をしていることと同じなのです。

理想形は「1分間10回の鼻呼吸」

口でする短く速い呼吸がダメなことはおわかりいただけたでしょうか。呼吸は本来、鼻から吸って、鼻から吐く鼻呼吸が理想です。鼻には空気中のほこりやウイルスが体内に侵入するのを防ぐ浄化装置が備わっています。さらに、口呼吸のように吸いすぎることがなく、適度に酸素を取り入れ、二酸化炭素を体内にとどめておくことができるのが鼻呼吸です。

酸素と二酸化炭素のバランスが整うと血流がよくなり、代謝がアップして、やせやすい体へと導いてくれます。最終目標は1分間10回の鼻呼吸。長く吐いて吐ききり、1〜2秒で自然と鼻から空気が入ってくるのが理想です。無意識でもこの呼吸ができる状態を目指し、「やせ呼吸」を練習しましょう。

横隔膜呼吸で自律神経を整えて食べ過ぎを防ぐ

ストレス社会の昨今、自律神経に注目が集まっています。自律神経は血流や心拍、腸の動きなど、自分ではコントロールできない生体機能を整えてくれる神経。脳や体が活発に活動するときに働く「交感神経」と、リラックスしたときに働く「副交感神経」があり、心身の健康はこの2つのバランスと深い関係があります。

ストレスの多い今の時代は、多くの方が体調不良を抱え、睡眠の質も悪い状態。ストレスがかかるとそれに対応しようと交感神経のスイッチが入り、リラックスする副交感神経にシフトせず、交感神経が高い状態が続くことがその理由です。

奥仲哲弥『お腹からへこむ!すごい「やせ呼吸」』(講談社)
奥仲哲弥『お腹からへこむ!すごい「やせ呼吸」』(講談社)

この乱れた自律神経のバランスを自分の意思で整えることができる唯一の方法が呼吸です。でも短く速い口呼吸ではダメ。横隔膜を動かす深い呼吸でないといけません。横隔膜は自律神経の束が集まっている場所。横隔膜呼吸で横隔膜を動かすと、副交感神経が優位に働くようになり気持ちが落ち着いてきます。

せっかちな私は、信号待ち、エレベーター待ちでは横隔膜呼吸が習慣です。するとスーッと気持ちが落ち着いてきます。そんなイラッとしそうな場面では「横隔膜呼吸をする時間をくれてありがとう」と思うようにしています。ストレスでお菓子を食べてしまうクセがある方はイラッとしたらぜひ横隔膜呼吸を。これで副交感神経を優位にすれば、ムダな食欲がおさえられ、ストレス食いも減りますよ。

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