部下への指導はどうすればいいのか。人事コンサルタントの新田龍さんは「表情や話し方も大事だが、相手の状況や感情を意識しながら会話することが重要だ。喜んでいる人や不安を感じている人には、自分も共感を示したほうがいい」という――。

※本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。

「コミュ力」を高めるための2つの要素

私たちのコミュニケーションには、2つの要素があります。

ひとつは、「言葉」や「文字」「表情」など、我々が比較的容易に感知できる「コンテンツ」。もうひとつは、相手の「感情」や「意識」「価値観」など、表から見えにくく感知が困難な「コンテクスト」。この両方に気を配ることが重要です。

俗にいう「コミュニケーション力が高い」状態を目指すにあたり、多くの人は前者の目に見えてわかりやすい「コンテンツ」を強化しようとするものです。

具体的には、

「面白く相手をきつける話題を提供する」
「ロジカルでわかりやすい構成で伝える」
「大きな声でハキハキと、笑顔で話す」

などが挙げられます。

ビジネスマンが話すイメージ
写真=iStock.com/takasuu
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相手の気持ちを意識し、共感することが重要

もちろんこれらも重要ですが、実は効果が大きいのは後者の「コンテクスト」を意識することです。

たとえば、会話をする上でも、

「なんとなく反応が鈍いから、この話は早々に切り上げて次の話題に移ろう」
「スポーツ観戦が好きだという相手に合わせて、サッカーにたとえて話してみよう」
「相手はハードワーク肯定派だから、単に『残業するな』じゃ通じないだろうな」

などと、相手の状況や感情を意識しながら会話するほうが、効果は大きいのです。

特にビジネス上のコミュニケーションの場合、相手が自分と同じ感情や共通の価値観を持っていることはあまり期待できません。

なので、「そもそも、根本的に相手とは理解し合えていない」という前提で、「相手の気持ちを意識し、共感すること」が重要になってくるのです。