カカクコム、クックパッドで代表を務めた穐田誉輝さんは、クックパッド退社後、結婚情報サービスの「みんなのウェディング」と不動産情報の「オウチーノ」を個人で買収した。一見かけ離れた事業分野だが、その2つにはある共通点があるという。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが書く――。

※本稿は、野地秩嘉『ユーザーファースト 穐田誉輝とくふうカンパニー 食べログ、クックパッドを育てた男』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

くふうカンパニー代表の穐田誉輝さん
撮影=西田香織
くふうカンパニー代表の穐田誉輝さん

ウェディングドレスを持ち込んだら、30万円請求された

クックパッドを辞めた穐田が個人で買収したのが結婚情報サービスのみんなのウェディングと、不動産情報のオウチーノだ。

どちらもすでに上場していた会社だったが、いったん成長が止まっていた。結婚式、披露宴の情報サービスと不動産の斡旋情報は一見、かけ離れたジャンルのサービスだ。

だが、彼は同じ範疇に属するものと考えていた。結婚式や不動産の取得契約はユーザーにとってはたびたび行うことではない。一生に一度というのが相場だ。そうなると、心がけのよくない業者は「一生に一度だから、ふんだくってやろう」と考える。

穐田はアイシーピー時代、友人が結婚した時、ウェディングドレスの持ち込み料を30万円請求されたと聞いた時、憤慨した。

結婚式場は「ウェディングドレス持ち込み料」を要求するところが多い。一着5万円から10万円だ。自分のドレス、たとえば母親の形見のドレスを持ち込むと、それだけで10万円を式場に払わなければならない。式場は保管料だと主張する。

しかし、そんなわけはない。保管料だと強弁するのならば、では、自宅からウェディングドレスを着用していくのであれば持ち込み料を取らないのだろうか。そんなことはないだろうし、また何か理屈をつけて追加料金を請求しようとするに違いない。

「一生に一度のこと」につけこんでぼったくる

カメラマンに写真撮影を頼むとする。式場の専属カメラマンだと5万円から10万円を支払わなくてはならない。階段を背景に撮影すると、「10万円アップ」という式場もある。それで、これを友人のカメラマンに頼むとする。すると「持ち込み料をいただきます」と言われるという。

果たしてカメラマンはウェディングドレスと同じように、式場に持ち込む物品なのだろうか。

とにかく理屈をつけて売り上げを上げるのが、心がけのよくない結婚式場のビジネスモデルだ。気の弱いカップル、交渉を面倒と思うのであれば、「どうせ一生に一度のことだから」とためらいはするが、払ってしまうだろう。

穐田はぼったくりビジネスを消し去りたいと思っている。

こうした不可思議な追加料金は不動産取得、会葬などでも起こりうる。一生に一度か二度しか経験しないから……。

葬祭場では通夜振る舞い、精進落としは高額になってしまう。近くの料理屋に行けば一人前3000円の料理が葬祭場のなかだと1000円はアップする。これは葬祭場ではないが、僧侶は戒名を付けるだけで2万円から100万円をそれとなく要求する。

「そういうのやめようよ」と穐田は思う。だから変えたい。