「仲介手数料3%」の不動産業界を変えたい

不動産情報サイトのオウチーノを買収したのはクックパッドのお家騒動の後だった。

M&Aの仲介業者から「オウチーノを買わないか?」という話が持ち込まれ、買収することにしたのである。

調べてみると、オウチーノの経営は厳しい状態だった。不動産情報サイトにはSUUMOとホームズという2大サイトがある。

オウチーノは上場(2013年)した勢いで2大サイトに迫ろうとしたのだが、追いつくことはできなかった。穐田に買収話が来たのは将来の成長戦略を描くことができなかったからだ。当時、ポータルサイト運営がメインだったけれど、好調とは言い難い状態だった。

ただ、やりようはあると思い、穐田は個人でオウチーノを買い取ることにした。

不動産物件の売買仲介手数料はぼったくりとまでは言えない。しかし、インターネットの時代にはそぐわない利率に思えた。売買仲介手数料の上限は400万円を超えると3パーセントだった。そして、どこの会社も上限の3パーセントを受け取っていた。上限が上限として通用せず、3パーセントが固定手数料となっているのが実態だ。

3パーセントには理由があった。かつて不動産の売買仲介は手間のかかる仕事だった。物件を見に行って、周りの様子、駅からの距離も現地まで行って調べて資料を作る。それから「買いたい」という希望者を物件に案内する。そして、買うことが決まれば契約書を作る。引き渡しに立ち会って購入者に鍵を渡す……。膨大な仕事量である。

家の鍵の受け渡し
写真=iStock.com/Rawpixel
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ネットでほぼ完結するのに、手数料は変わらない理不尽

ところが、今では1億円の中古物件の仲介でも、事務所にいながらパソコンを使って仕事を完結することができる。

「好物件 美麗 駅近 学校近」と書いたチラシを電柱に貼って回るのは、かつての不動産仲介業だ。今、そんなことをやっている人はいない。インターネット上でマッチングができる。

また、物件は直接、見に行かなくともグーグルマップとグーグルのストリートビューでわかる。周りの学校、スーパーマーケットまでの距離もだいたい見当がつく。

身体を動かすのは実際に物件を見ること、引き渡しの時に鍵を渡すことくらいだ。

それでも仲介手数料は3パーセント。10億円の物件だったら、買い手は3000万円も手数料を取られてしまう。

不動産売買の仲介手数料は現在では仕事の実態に合わなくなっている。サイト上で多くの作業を済ませれば買い主、売り主ともに手数料を節約できる。

また、不動産賃貸の場合、不動産仲介手数料は家賃の1カ月分となっている。これもマッチングはインターネットでできるのだから、高額な家賃の家を借りた人、たとえば月額200万円の住居を借りたい人は200万円の手数料を取られる。それもまた理不尽と言っていい。