物件情報サイトだけでなく、業者向けのツールも

理不尽な現状が通用している分野はインターネットとAIで手数料を安くすることができる。

「自分のやるべきことはそれだ」

そう考えて穐田はオウチーノを買収した。何度も引っ越しをしたし、自宅を買った経験から不動産ビジネスに入っていくことにした。

くふうカンパニーグループのなかに入ったオウチーノは現在、メディアでの情報掲載だけでなくニッチな仕事で成長している。

それが「オウチーノくらすマッチ」という不動産業者向けの営業支援ツール。不動産業者は希望者が来店、あるいはホームページを訪れた時、物件情報を知らせる。ただ、学校、スーパー、最寄り駅といった物件の近くにある地域情報は担当者がその場でひとつひとつ検索して知らせる場合がほとんどだ。オウチーノでは物件の最寄り情報を用意して、それを不動産業者に提供している。

不動産業者は客が来たら、オウチーノのサイトにログインしてその情報を見せればいい。大きな仕事ではないから薄利だ。ただ、そこから始めてオウチーノのサイトを周知し、存在感を高めて、中古物件の個人間売買に足がかりを築く。いずれ中古物件を売りたい人、買いたい人をサイト上で完結させる。

仲介手数料はゼロにはできないが、3パーセントも取らなくていい。手数料を下げてユーザーを集める。加えて、新築物件の相談、プロデュースもやる。なるべくハウスメーカーを介在させることなく、家を建てたい人と工務店、建築家をネット上でマッチングする。

「不動産は直接、訪問して買うもの」という常識を破る

ハウスメーカーに家を建てる依頼をすると、直接、工務店に頼むより割高になりやすい。それはハウスメーカー自体はプロデューサーだからだ。実際に設計するのは建築家、施工は工務店だ。ハウスメーカーに払う建築費には本社経費、テレビコマーシャル代、住宅展示場経費が上乗せされている。

オウチーノはハウスメーカーがやる部分をネット上で行い、手数料を安くする。それが今後のやることだ。ただ、これは他社もすでに手がけている。それでもなかなかネットの不動産プロデュースが成長しないのは「不動産は直接、訪問して買うもの」という認識と常識があるからだ。オウチーノがやることはユーザーの認識と常識をどう打ち破るかだろう。

クックパッドを辞めてから穐田が起業した会社、買収した会社は十数社になった。

くふうカンパニーのホームページを見ると、ユーザー視点に立っていることがわかる。通常の事業会社はサービスを生活関連、不動産関連など会社側から見た事業別で分類する。だが、くふうカンパニーはユーザーの困りごと別に分類してある。同社の基本テーマがユーザーの困りごとの解決だとわかる。