「5社掛け持ち」の女性社外取締役は6人
そのため、複数の企業の社外取締役を兼任するケースが増えています。プロネッドの「2023年 社外取締役・社外監査役白書」は、東証の全上場企業3772社の社外役員の分析を行なっており、5社の社外役員を兼務する女性社外取締役は6人、4社を兼務するのは43人に上っています(地方証券取引所への上場企業の社外取締役と、取締役就任を含めると6社のケースもあります)。
「社外取締役に多くのことを望まない」と企業側が考えているのなら、「何社兼務しようと、取締役会に出席してもらえれば、形が整う」というのが本音かもしれません。ちなみに、福原愛氏の出席率は5割。多くの社外取締役は9割以上の出席を目指しています。
「女性の社外取締役がほしい」というニーズによって、勢いづいているのが社外取締役マッチングビジネスです。図表3に示したように、女性の社外取締役を紹介するサービスが続々と登場しています。「社外取締役になりたい」という女性の希望者も多く、登録者数は増えているようです。
社外役員の平均報酬は年間1170万円
日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門が、TOPIX500社の役員報酬の支給実態調査を今年11月に公表しましたが、社外役員の1人当たりの年間平均総報酬の中央値は1170万円。社外役員の定義は、社外取締役(監査等委員を含む)と社外監査役を指しています。
5社の社外取締役を兼務すれば5850万円、4社の兼務の場合は4680万円の報酬を得られるのだから、社外取締役になりたいのも無理もないと言えます。
取締役の重要な仕事は、取締役会に出席して意見を述べ、意思決定案件に賛成、反対の意思表示をすること。社外取締役には、特に、社内の経営陣では気付かないような意見、外部の視点から、客観的なアドバイスや提案をし、法令遵守(コンプライアンス)、企業統治(コーポレートガバナンス)の問題点を指摘する役割があります。
しかし、社外取締役の適正や企業への貢献度を測ることは難しいのが現状です。公表されているのは取締役会への出席率と、実績を紹介した短いコメントぐらいで、社外取締役が経営陣にどのような注文を出したのか、苦言を呈したのか、企業価値の向上にどのような役割を果たしたのか、判断する情報はほとんど公開されていません。