果たして「数合わせの起用」なのか?
女性の取締役への登用は、経営の適正化やガバナンス向上のための起爆剤であるはずなのに、女性の選任自体が目的となっているように思います。
コーポレートガバナンス・コードの目標や基準を作る証券取引所、ジェンダー・ギャップの解消を目指す政府は、社外取締役の要件を明確にし、実態調査を行うべきです。複数の企業の社外取締役を兼務していて問題はないのか、についても検証されていません。
「2025年をメドに、女性役員1名以上を選出する」「2030年までに、役員の女性比率を30%以上にする」。この数値目標にこだわるため、ひずみを生んでいるようです。
ある経営者は「女性のタレントや女子アナを社外取締役に起用している会社があるが、理解できない。数合わせの起用じゃないのかね」と手厳しい本音を漏しています。
「経営を熟知しているプロでなくてもいい」
女性の社外取締役を選任している企業のトップに、取締役会の決議事項で社外取締役から反対されたことがあるか、そのときどのような決定を下したか、を聞いてみました。「お飾りの社外取締役」が多いと予測していた中、意外な答えが返ってきました。
「ある投資案件で、採算性がどうなっているのか、改めてチェックしてほしいと、女性の社外取締役から意見が出され、次の取締役会までに再検討して、結果を報告しますと答えました。次回の取締役会に諮って議論し、最終的に投資を中止すると結論を出すと、社内の取締役も、社外取締役も驚いたようです。変なプライドを持っていないので、投資案件をつぶされたという受け止め方をしません。メンツにこだわる必要はありません」
「随分、優等生の答えですね。本心からそう思っているのですか」と、問うてみました。
「会議に出席している取締役が自由に発言ができ、その発言が経営に活かされることが重要だと考えています。ワンマン経営者、長期政権を築いている経営者がいる企業では、社外取締役はまったく機能しないと思います。社外取締役に限らず、社内取締役も、発言をして睨まれると損だ、という打算が働きますからね。社外取締役は、その企業の経営を熟知しているプロでなくてもいい。自分の専門分野、違った立場からズケズケ意見や提言をしてもらえば、検討項目が増えて時間はかかりますが、チェック機能が働きます」