両陣営の埒外にいる国が信託統治すべき
とはいえ、穏健派が実権を握っても、ハマスがガザを実効支配したまま停戦するとは考えにくい。現実的には、ハマスを排除したうえでガザに暫定自治政府を設立するのがよいだろう。ヨルダン川西岸を治めるパレスチナ暫定自治政府にガザを治める力はないので、第三者の外国人部隊を入れて、新たな暫定自治政府をつくるのだ。
第一次世界大戦や第二次世界大戦のあと、ミクロネシアの島々は信託統治という形で外国政府が統治した。たとえばパラオは第一次世界大戦後に日本が国際連盟に委託されて統治し、第二次世界大戦後はアメリカが国際連合から任されて信託統治していた。その後、自治できる体制が整った後に独立し、94年にパラオ共和国となった。ガザも同じ方式で、段階的にパレスチナ国家の設立を目指せばよい。
信託統治する国は国連が決めるが、アメリカではイスラエル贔屓すぎてパレスチナ人が受け入れないだろう。これでは、ハマスが別の形で生き残り、凄惨なテロが続くことになる。
両陣営の埒外にいる国が信託統治すれば、パレスチナ人も納得するだろう。たとえばオスロ合意の延長線上で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの北欧4国。アメリカ追従の日本が信託統治に関わるのは難しいが、イスラムでも非アラブ圏のマレーシアやインドネシアなど、アジアの国々が関与することもありえる。
2つのルートのうち、流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる。