「社員が家を買えるようにしたい」

この先、福田パンはどうありたいのか。「大きくするつもりもないですし、今のやり方を変えるつもりもない」と改めて強調した上で、福田社長はこう呟く。

「社員が家を買えるようにしたい。子どもが大学に行きたいと言えば、すんなり行かせられるようにしてあげたい。小さい会社なので、そんなに給料を出せてはいないんですけど、それでも社員が喜んで働きにきて、十分な生活を送れるようにしたい。去年も社員の一人がマンションを買ったんです。そういうことが一番嬉しいですね」

福田社長には4人の子どもがいて、全員を大学に送り出すことができた。社員にも同じことをさせてあげたい。そのためにも会社を維持する責務がある。

目下の課題は雇用の確保である。人手が足りずに福田社長自らもパンの製造ラインに入ることがある。地元の若者にとって、もっと魅力ある会社に育てるのが使命だと感じている。

福田パン矢巾店の前にたつ3代目社長・福田潔さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
福田パン矢巾店の前にたつ3代目社長・福田潔さん

盛岡以外に店を出したい唯一の場所

もう一つ、福田社長には夢がある。盛岡から出ないことを頑なに貫いているが、実は唯一、花巻には出店したいのだと明かしてくれた。花巻は創業者である祖父の故郷である。

「じいさんが花巻出身だから、いつかは店を出したい。今は花巻もシャッター商店街になっていて、活性化のために若い人たちが頑張っているんですけど、何かしらお役に立てれば。それが恩返しだと思っています」

福田パンの事務所に掲げられたポスター
撮影=プレジデントオンライン編集部
福田パンの事務所に掲げられたポスター。福田社長はコッペパンブームを「バブル」と割り切り、全国進出の誘いを断ってきた。

謙虚さ、素朴さ、地に足のついた経営、そして何よりも地元を大切にする思い。これらの総合力が福田パンの魅力の源泉であり、だからこそ客も愛着や信頼感を持って店に何度も通うのだ。未来永劫えいごう、福田パンの名が岩手の地に残り続けることを願ってやまない。

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