「会員の半分くらいは幽霊会員になっている」

現在、一部のメディアでは「池田大作というカリスマを失った創価学会はこれから大きく変わる、崩壊に向かっていく」などといった意見も散見されるが、すでに述べたように、現在の創価学会はとっくの昔に「ポスト池田体制」に移行している。

もちろん、池田氏を直接知る高齢世代の創価学会員たちは、今回の訃報に大きな悲しみを覚えている。それが創価学会の組織力を弱める方向に作用すること自体は、確実に起こるだろう。ただ、創価学会の組織基盤はここ十数年、池田氏の生死に関係なく弱ってきている。

かつて暴力や脅迫を当たり前にように伴った過激な折伏(布教)活動はすっかり影をひそめ、一から思い立って新規に入会する会員はほとんどいない。いま創価学会員の大半を占めるのは、「単に創価学会員の家に生まれたから」という2世、3世で、彼らの多くはまじめに会のための活動などしない。「すでに創価学会員の半分くらいは幽霊会員になっているのではないか」(ある古参会員)といった声まであるほどだ。

この状況は国政選挙における公明党の獲得票数という形で、あまりにもはっきり表れている。2005年の衆議院議員選挙で公明党は全国から比例票を898万票集めたが、22年の参院選で獲得した比例票は618万票だった。つまりこの十数年で、公明党支持者(多くは創価学会員だ)は300万人近くどこかへ消えてしまっているのである。もちろん、池田氏の長期の不在がそうした状況を招いた面は確実にある。しかし、本質的な問題はまた別に存在する。

信濃町にある広宣流布大誓堂の外観
信濃町にある広宣流布大誓堂の外観(写真=Sinhako/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

他教団も信者数を大きく減らしている

そもそも現在の日本は、急速な少子高齢化を伴う人口減少社会である。入り口にゲートを持ち、居住者以外が入れないタワーマンションの流行、また隣に誰が住んでいるのかもわからないことも普通になった地域コミュニティの衰退は、宗教団体の勧誘活動を確実にやりにくくしている。

さらに創価学会に限らず戦後日本の新宗教団体は、サラリーマンなどに比して可処分時間が豊富な専業主婦の会員たちを組織活動の実行部隊として重宝してきたが、女性の社会進出が進み、そもそも専業主婦なる存在が激減している。

こうした近年における社会状況の変化が、創価学会に限らず、多くの宗教団体の勢いをそいでいる。実際に文化庁が発行する『宗教年鑑』によれば、2013年から22年の10年間で、天理教は公称信者数を507万人から418万人に、立正佼成会は同じく公称信者数を311万人から207万人に落としている。先に創価学会の過激な折伏は今や影をひそめていると書いたが、意識して穏健化したというより、そういう過激なことは、もうやりたくでもできないというのが実情だ。