気がきく人は適度な気遣いで楽に過ごし、気がきかない人は過度な気遣いで疲れる。
あなたが一日のうちでもっとも多く使っている言葉は何でしょうか?
気を遣いすぎて疲れやすい人が、よく使う言葉の1つに「ごめんね」があります。人に何かを頼むときはもちろん、手伝ってもらったり、教えてもらったりする度に、まず「ごめんね」と言います。
ときには、まったく必要のないシーンで言っていることも多いものです。
例えば、待ち合わせをしたときに、遅刻をしていないのに会った瞬間から「ごめんね」と言う人もいます。この「ごめんね」は、謝罪というよりは、相手の時間をもらっていることへの感謝の気持ちで伝えていることがほとんどなようです。
「ごめんね」は悪い言葉ではありません。けれども、あまりに頻度が高いとかえって相手を恐縮させてしまって、おたがいに変な気を遣い合うようになることがあります。
迷惑など感じていないのに謝られると、“謝らせてしまった”という気持ちが生まれて「こちらこそごめん」と、ごめんの応酬になってしまうのです。
気がきく人は、自分に明らかに非があったり、相手に迷惑をかけたりしたときなど、本当に必要なときしか「ごめんね」とは言いません。
人に何かを手伝ってもらったり教えてもらったりしたら「ありがとう」、待ち合わせのときには「お待たせ」や「無事会えてよかった」など、過度に気遣いのない、自然な言葉を使っています。
さらに、気がきく人は親切を受け取ることにも素直です。
まず「嬉しい」と言い、笑顔で感謝します。気遣いが苦手な人ほど、相手が何かをしようとしてくれたときに「ごめんね」だけではなく、「本当に大丈夫?」「無理してない?」「もしなんだったら気にしなくていいからね」などの言葉を過度に伝えてしまいます。
気を遣いすぎて疲れやすい人は、頼ることが苦手という特徴もあります。以前、コミュニケーションの悩み相談にいらしたある企業の管理職の方が、こんなことをおっしゃっていました。
「もっと人に頼れたらと思うのですが、みんな大変なのに頼んだら悪いと思う気持ちが強くて、頼む方が疲れるから結局自分で抱えてしまうんですよね……」
この「承認欲求」には、褒められることと同様に頼られることも含まれています。人に頼られると、自分の存在を認めてくれていると感じることができるため、承認欲求が満たされるのです。
ですから、過度な気遣いで人に頼れなかったり親切心を断ってしまう人より、適度な気遣いを持ちながらも頼ってくれたり、親切を素直に受け取ってくれる人の方に、人は好感や親近感を抱きやすくなります。
過度な気遣いは、自分だけではなく相手を疲れさせてしまうこともあります。
先日、とある高級旅館に泊まった友人が、こう言っていました。
「いい具合に放っといてくれてとても居心地がよかった」
高級旅館となると、相当サービスがいいのだろうとイメージしますが、過剰なサービスや気遣いはかえって緊張感や居心地の悪さを生み出してしまうこともあります。
必要以上に何かと話しかけてきたり、ドアの開閉のたびに走ってきたり、しょっちゅう「困ったことはありませんか?」など言われ続けていたら、まるで監視されているかのようで落ち着きません。
それよりも、基本的にはそっと見守る態度でありながら、困ったときにはすぐに駆けつけてくれて、頼み事にも気持ちよく対応してくれたら、安心してリラックスできます。
無理せず気遣いをするためにも、「頼っていい」という言葉と、「そんなに気にしなくていい」という言葉を、つねに自分にかけてあげましょう。相手の気持ちを気遣おうと思っても、相手の気持ちは相手にしかわからないのです。過剰な気遣いで自分が疲れてしまわないように、もっと気を楽にした方が人間関係はうまくいきます。