ちょうどいい気遣い・心遣いの方法はどんなものか。伝わる表現アドバイザーで産業カウンセラーの山本衣奈子さんは「気遣いを過度なものになると周囲がかえって疲れてしまい、逆効果になる」という――。

※本稿は、山本衣奈子『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

ハチ公前
写真=iStock.com/takemax
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気がきく人はユーモアに気を配り、気がきかない人は脱線しないように気を配る

「ユーモア」とは「おかしみ」、つまり「面白さ」を表す言葉です。

「ユーモア」という言葉の中には、「おかしみ」だけではなく、「上品で洒落た」「人を和ませる」という意味も含まれます。

人を傷つけたり不愉快にさせたりするようなものは、仮に一部の人が笑顔になったとしても、ユーモアではなく言葉の暴力になってしまいます。

ユーモアの使い方を間違えてしまうと、笑っているのは自分一人、相手や周囲は怒ったり傷ついたり、場合によっては泣いたりなんてことも起こり得ます。あくまでもそこにいる人たちみんなが、楽しい気持ちになれることが大切です。

かつて、このユーモアの取り入れ方が上手な同僚がいました。職場内でも彼の周囲だけはいつもいい雰囲気が漂い、みんなの自然な笑顔がよく見られました。

とはいえ何も、すごいギャグを言ったり、ボケやツッコミで笑わせていたりしたわけではありません。

彼が上手だったのは、「ちょっとした例え」です。朝の挨拶の際に、「今日の○○さんの服装、爽やかですね! ここは南仏プロヴァンスかな」といった言葉を添えたり、感謝を伝えるときに、「本当にありがとうございます! ○○さんの前世は天使かな」と言ったり、小さな例えをよくしていました。

「〜かな」という言い方も、「〜だね」と言い切るよりも柔らかい印象となり、思わず相手が「ふふっ」と微笑みたくなるような雰囲気を作り出していました。

笑わせるといっても爆笑を生む必要はなく、ほんのちょっとした笑いがあること、これが、特に緊張感や疲労感が生まれやすい職場などではとてもいい清涼剤となってくれます。

生真面目なのが悪いわけではありませんが、車のハンドルに遊び(ゆとり)があるから楽にまっすぐ走れるように、人も息抜きや脱線といった遊び(余裕)があるからこそ楽しく前向きなエネルギーを保つことができるものです。遊び心を忘れないようにすることは、人づきあいだけではなく、ストレス軽減においても大切なことです。

「とはいえ、ユーモアのセンスなんてないし……」「いい例えが思いつかない……」ともし悩むことがあったら、「笑う・笑わせる」ことにこだわるのではなく、「いい気分になる」ことにこだわってみてください。

いい気分から生まれる言葉や行動は、それを受け取る人のことも楽しい気持ちにしてくれます。

いい気分になるために必要なのは、よくない気分になりそうなことをなくしていくことです。

例えば、何事に対しても、最初は「おーいいね」から入ることを意識してみるだけでも効果的です。

朝雨が降っていたら、「おーいいね、これは肌が潤う」と言ってみる。誰かがミスをしたら、「おーいいね、これは嫌でも成長するね」と言ってみる。仕事が次から次へと降ってきたら、「おーいいね、ずいぶん人気者じゃないの」と言ってみる。

あえて「おー」を入れているのは、無意識にネガティブな意味で「おー……」と口に出てしまったとしても、すぐに軌道修正できるようにするためです。「おー」でテンションが下がっても、「いいね」で上げることができます。いい気分がネガティブをポジティブに変換し、その明るい言葉がユーモアとなって伝わっていきます。

ユーモアというと、相手をいじることだと思っている人もいますが、相手を茶化すもの、本人が嫌がるようなものは決してユーモアではありません。どんなに自分はユーモアのある言い回しだと思ったとしても、人が嫌がっていたら、悪趣味になってしまいます。

あくまでも「いい気分」から生まれる自然なユーモアを大事にしていきましょう。

★気がきく人は、いい気分になる!