※本稿は、石井朋彦『新装版 自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
知らない番号からの着信を無視していたら…
ある作品の脚本制作中のことでした。ぼくは当時、プロデューサー補という立場で、スタッフに脚本会議の日時と場所を連絡する仕事をしていました。
脚本会議には、キャラクターデザイナーが同席することがあります。アニメーションにおいて、キャスト=俳優は手で描いたキャラクターです。監督、脚本家、プロデューサーと共に、ストーリーを組み立てながら、キャラクターのイメージをつくってゆくのです。
当日、キャラクターデザイナーと連絡がつかず、会議が始まりました。何度か携帯に着信があったのですが、登録していない番号だったので、営業電話かと思い、無視していたのです。
30分後、インターホンが鳴り、ドアを開けると、キャラクターデザイナーが真っ赤な顔をして立っています。
「あれだけ電話したのに、なんだ!」
ぼくは電話に出なかったことを謝りましたが、彼の怒りは収まりません。そもそも、会議の連絡自体を怠ったということにまで怒りは及びました。ぼくとしては、事前に何度も連絡をし、返信がなかったので多忙なのかと思っていたのですが、激高している彼は聞く耳を持ちません。
打ち合わせが始まりましたが、険悪な空気のまま。ぼくは何度も「すみませんでした」「申し訳ありませんでした」と繰り返しましたが、彼は許してくれません。
「どうすべきだったか?」メールに書かれていたこと
その様子を、鈴木さんはじっと見ていましたが、大きな声で、こう言いました。
「石井、何度も謝らなくていい。○○(キャラクターデザイナーの名前)! お前もいい加減怒るのはやめな!」
鈴木さんの一声でその場は収まり、会議は終わりました。
週末、鈴木さんからメールが届きました。「どうすべきだったか?」というタイトルでした。
何がって、土曜のこと。○○くんが怒った件。考えてみた。
まずは、携帯がかかってきたとき、どうするか。
出るか出ないかは、そのときの話の内容次第。あの場合は、
1.○○くんに携帯の番号を伝えてあったのだから、想像力を働かせるべきだった。
2.電話に出る場合は、別の部屋に行く。
あのとき2度目の電話があった。その場合は、出るべきだった。なにしろ、同じ人からかかってきた可能性が大きい。
自分の想像力のなさを恥じるべき。
それと出ないと決めたときは、あらかじめ電源を切る、これも大事だと思います。
それと日頃から、みんなが携帯をどう使っているか、観察もするべし。