メディアにも日本経済停滞の責任がある

【石橋】財務省の審議会である財政制度等審議会(財政審)のメンバーになっているマスコミ関係者も同じです。財務省に見事な資料をもらって記事を書いていた人が、財政審のメンバーに選ばれます。

まとめてもらった資料は、もちろん財務省に都合のいいようにつくってある。それをわかってるのか、わかってないのか、そのまま記事にするから、財務省に都合のよい記事しか載りません。

それで覚えめでたくなって、財政審のメンバー入りとなります。財政審メンバーになれば、財務省の口利きもあって、どこかの大学の教授になっていきます。

新聞社と財務省のあいだには、そうした悪しき慣習みたいなものができあがっています。

【田村】そうしたなかでは、まともな記事がなかなか出てこないのも当然です。

財務省は日本のGDPの半分くらいのカネを管理・配分するのですから、国家の命運を左右するのです。メディアがその言いなりになってしまえば、民主主義は形骸化します。

大手メディアにそういう自覚がないまま、「社会の公器」「言論の自由」を看板に掲げるのは欺瞞ぎまんです。日本経済が四半世紀も停滞し、給料が上がらないどころか下がり続けてきたのは、財務省の緊縮財政と消費税増税政策が招いたデフレのせいですが、財務省の言いなりになってきたメディアにも大きな責任があります。

安倍さんは脱デフレを目指し、アベノミクスに踏み切ったのですが、財務省寄りのメディアに包囲されて、大きな制約を受けたのです。

防衛増税に向けて世論をつくる「有識者会議」

【石橋】岸田文雄首相が、2023年7月の参院選後に内閣官房に設置した「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、防衛費増に伴う増税に向け、コンセンサスを得るために、財務省が主導して設置した会議です。

安倍さんは参院選中の7月8日に凶弾に倒れてしまいますが、元々は「防衛国債」発行を主張していた安倍さんを牽制しようと企てて設置したのです。

そもそも「防衛力を総合的に考える」と銘打っていながら、メンバーに防衛問題の専門家はほとんど入っておらず、日本総研(*1)の翁百合さんや金融機関のトップら財務省の息のかかった人ばかり。

議事録を読んでも、財源論に終始しています。日経元社長の喜多恒雄さん、読売グループ本社社長の山口寿一さん、元朝日主筆の船橋洋一さんらが入っているのも笑えます。

防衛増税に向け、主要メディアを使って世論を醸成しようというのが見え見えじゃないですか。

*1 日本総研 株式会社日本総合研究所。総合情報サービス企業で、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3機能を有している。