日経の一面を飾った“大本営発表記事”
【田村】岸田文雄首相は2022年5月に来日したバイデン米大統領に「防衛費の相当な増額」を約束しました。自民党はそのタイミングで国内総生産(GDP)比2パーセントを掲げました。
そこで、防衛費増額論議が始まりましたが、先導するのは例によって財務省です。
岸田首相は「防衛費増額に関する有識者会議」を開いたのですが、「有識者」の人選はほぼ財務省の振り付けによります。
11月17日の『日経』朝刊一面トップはその提言の「原案」を掲載しました。明らかに財務省筋のリークに基づく“大本営発表記事”です。
見出しは〈防衛費増、法人税など財源〉で、〈幅広い税目による国民負担が必要だ。〉〈負担を将来世代に先送りするのは適当でない。国債依存があってはならない。〉と強調しています。
安倍晋三首相が言及した防衛国債論を一蹴したのです。
自民党の増税反対派グループは安倍さんというリーダーがいないと結束力がどうしても弱くなる。財務官僚はそこをついて、「財源はどうするのですか」と迫る。
「有識者会議」が一段落した11月18日には自民党と公明党の税制調査会総会が開かれました。いずれも「防衛財源は法人税を軸にする」と結論を出します。
もとより、財務省の防衛国債否定の論拠は、「安定財源にならない」という屁理屈です。「法人税こそ、景況に左右される不安定財源の代表である」は財務官僚の口癖だったのに、臆面もなく言い切るのは、それだけ反対派を舐めてかかっている証拠です。
しかも経済界の猛反発を食らいかねません。財務官僚はそんな逆風は計算済みだからこそ、「幅広い税目」の増税の必要性を有識者に言わせたのです。
真の意図は「消費税15%以上への引き上げ」
【田村】家計消費は景気如何にかかわらず一定に保たれるので、消費税こそは安定財源の代表税目です。財務省が隠す真の意図は消費税率の15パーセント以上への引き上げで、防衛費増額はさらなる消費税増税へのまたとない踏み台なのです。
消費税増税と緊縮財政が四半世紀もの恐るべきゼロ経済成長をもたらし、国力を衰退させてきました。それを繰り返そうとする財務省に、メディアはやすやすと誘導されるのです。
岸田政権は結局、2027年度までの5年間で必要な防衛力整備費約43兆円の一部を、防衛関連以外の歳出削減や法人税などの増税で賄うことにしました。
2027年度以降は毎年度、約4兆円の財源を必要とし、そのうち歳出削減と増税で1兆円以上ずつ確保する財務省シナリオに従うことを決めたのです。
国内経済のほうは、新型コロナの収束を機に、景気のV字回復、脱デフレの道筋になってきたというのに、この先は増税が待っていると、消費者や中小企業を身構えさせます。その財務省に加担するメディアの罪は大きいです。