パラサイト・シングルの増加

二つ目の原因は、「世帯構造の変化」です。

日本では1990年代の前半にバブル経済が崩壊し、その後、長期にわたって不況が続きました。この結果、若年層を中心に非正規雇用で働く割合が増え、所得水準も低下しています。このような状況を受け、学校を卒業後も親と同居し、経済的に依存する子の割合が増加した可能性があります。

実際に「厚生行政基礎調査報告」および「国民生活基礎調査」を見ると、65歳以上の人がいる世帯のうち親と未婚の子どものみの世帯は、1975年では9.6%(約68万世帯)でしたが、2019年では20%(約512万世帯)にまで増加しています。

中央大学の山田昌弘教授は、学卒後でも親に基本的な生活を依存する未婚者を「パラサイト・シングル」と呼びましたが、経済環境の悪化から「パラサイト・シングル」が増加した可能性があります。ただし、山田昌弘教授が「パラサイト・シングル」の存在を指摘したのは20年近く前であり、近年の「パラサイト・シングル」はより経済的な理由から親と同居せざるをえないといった苦しい状況を反映していると考えられます。

以上のような同居未婚者の増加が親世代の経済的負担を長引かせ、高齢の親の生活満足度を低下させる原因の一つになったと考えられます。子育て期のみならず、子育てが終わったあとでも子どもの存在が満足度を低下させるという結果は、ショッキングです。このような現状があるからこそ、新しい子どもの数が増えず、少子化傾向が続くのではないでしょうか。

親子世代、向き合って話し合い
写真=iStock.com/kazuma seki
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孫の存在はシニア世代の幸せにどう影響するか

さて、これまでは子どもと高齢の親の幸福度の関係を見てきましたが、高齢の親(=シニア世代)との関連で近年注目を集めるトピックがあります。

それは、「孫の存在がシニア世代の幸せに及ぼす影響」です。

一般的に言って、シニア世代から見た孫はかわいいものです。おそらく、直接的な育児の責任がないのと同時に、精神的・経済的な余裕から子どものかわいさをでることができるという背景があると考えられます。このため、自然な発想として、孫がいるほど幸福度が高くなりそうです。

しかし、近年では「孫疲れ」という言葉も聞かれます。