環境に感化された「横並びの成長希求」
選択の回数が増える職業生活の変化を前提としてみよう。どんな大企業であっても自分の職業人生を終わりまで保証してはくれない。自身のキャリアを安定させようと思ったら、自分に経験や知識、ネットワークを蓄積するよりほかないのだ。
みんながみんな「成長したい」とギラギラしているわけではないが、そういった機会を求めざるを得ない。ある種、「横並びの成長希求」と捉えるべきなのではないか。環境に背中を押される形で、成長を求めているのだ。
日本的経営・日本型雇用が崩れたことが共通の理解となり(実際に崩れたかどうかはこの際問題でない、そう理解されていることが問題なのだ)、人生の安全や安定を会社が保証してくれなくなったと感じていることに起因する変化。キャリア自律が叫ばれるなかで、自分で自分の職業人生の安定を考えなくてはならない。そういったことを大企業で働く若手ですら認識している。
若手は転職を前提にキャリア設計を行っている
実際、大企業に就職した新卒1年目から3年目の若者にアンケートをとると「定年・引退までその会社で働き続けたい」という回答をしたのは、わずか20.8%であった(図表1)。実に8割の人が自分はどこかのタイミングでその会社を辞めるだろうと考え、もっと言えば全体の半数弱は2〜3年程度しかその会社との関係性が続かないかもと考えている。
なお、図表1の結果は統計的処理を施した調査結果だが、個別の企業に協力を得て筆者が第三者として入り調査を実施した場合にも、同様の結果が出ていた。
つまり、ごく少数のみが「定年まで」と回答し、一方で多くが「2〜3年は」「5年は」など目途を設けた回答をしていた(図表2)。自社だけは違うと思っていないだろうか。
重要なのは、実際にいまの若手が数十年後の定年までいるか・いないか、ではなく、転職するという選択のタイミングが来ることを前提に、若手が職業生活設計をしているということだ。