「24時間働けますか」の時代の終焉

何度も繰り返すようだが、もちろんこれはとても良い変化だ。若者を使いつぶすような“ブラック企業”を許してはならない。そして、その結果として若手に起こった変化については様々なものがあるわけだが、その最大のものに、「本業の仕事が人生に占める時間の割合が、過去の若手と比べて小さくなった」ことがあるだろう。本業の仕事が人生の一部分に過ぎなくなってしまったのだ。

本業で「24時間働けますか」という時代が、法改正によって完全に終焉しゅうえんを迎えた。これはもう戻らない、不可逆な変化でもある。

すると、これまでのように自分の会社のオフィスだけで若者が過ごすわけではないから、企業と若手の関係性は変わらざるを得ず、若手社員がとりうる行動の選択肢も変わっていく。

例えば職場だけで十分な職業経験を得られずキャリアを豊かにすることが難しいと判断すれば、副業・兼業したり、プロボノ(職業上のスキルや経験を活かした社会貢献活動)を行ったり、社会人インターンに参加するなど外部にアクションを起こす人も出てくる。

また、自社の職場において、これまでと全く異なる発想でアクションを起こす若者も出てくる。上司に直接「こういった経験がしたい」「もっとフィードバックをたくさん欲しい」と言ってみたり、組織と若手の関係性の変化を基軸に、実際の行動が変わっていくのだ。これは単なるわがままだろうか。

若者は「自らの成長が期待できるか」で就職先を選んでいる

成長意識や自律志向も顕在化する。仕事に対して「成長機会を求める若者が多い」というデータが、多様な調査で出ている。

例えば、とあるシンクタンクが出したデータでは「就職先を検討するための決め手になった項目」で、ここ数年、「自らの成長が期待できる」という項目が最も選択率が高い項目となっている。2023年卒では47.7%の人が選択していたそうだ。

別の調査では、20代正社員について「自律的なキャリア形成に対する意識が高まっている」とする結果が報告されている。また、仕事選びの重視点として20代前半正社員は「いろいろな知識やスキルが得られること」や「入社後の研修や教育が充実していること」を選択する傾向が高まっていることも指摘されている。

「成長できる環境」を、仕事を選ぶ決め手として選ぶ傾向が高いわけだ。ここが重要なポイントだ。こう言うと「最近は成長を求める若者が増えた」と捉えられるかもしれないが、筆者は単に「意識高い系が増えた」といった状況にはないと考えている。

これを理解するために、なぜ成長を求めるのかを考えなくてはならない。