「強い野党」の不在が、政権を傲慢にさせている
有権者も同じだ。過去記事でも指摘したように、野党の支持率は合計で15%ほどしかなく、国政選挙で30%以上の得票をしたとしても、投票の過半は、政権交代を希望してのものでない。
海外の事例を見ても分かるように、主要国の大統領や首相の平均の在任期間は5~10年。日本のように、任期途中で与党内から辞任要求が高まるのは稀であり、長期政権になって連続登板が禁止されていたり、次の選挙は新首相で臨むほうがいいと判断したら交替するだけである。
政府が傲慢にならないようにさせる抑止力は、政権を奪取するかもしれない野党の存在が大きい。その意味で、現在の日本の自民党永久政権というのは、民主主義の利点を発揮しにくい体制である。だからこそ、国民の意思とはかけ離れた政策ばかりが実行され、自民党の派閥の都合で政権がコロコロと変わってしまうのだ。
日本の首相も5~10年は務めたほうがいい
いつまでも憲法改正問題を引っ張るのは、国益を損ねることにつながる。ほどほどのところで片付けて、二大政治勢力が10年~20年ごとに政権交代するという状態が、日本にとって好ましいのではないか。少なくとも、首相は主要国のように5~10年は務めたほうがいい。
岸田内閣の支持率は減っているが、数字ほど深刻に受け止める必要はない。支持率低下に怯え、人気取りのような中途半端な政策を打ち出しているのが、むしろ逆効果になっている。
安倍晋三元首相の場合は、30%といわれる保守層を固めて党内から崩されないようにしから落ち着いた政策運営ができ、選挙を打つタイミングでは中道リベラルにすり寄った。だからこそ、歴代最長となる8年8カ月、首相であり続けた。
岸田首相は、安倍路線の基本を維持する姿勢を示し、憲法改正や皇位継承問題は安倍氏との約束だからしっかり取り組むと明言して総裁選に臨めばいい。ただし、経済政策は生き物だから、最晩年の安倍氏が言っていたことに囚われていてはダメだ。
一方、公明党との関係や無党派層は確保しておいたほうが賢明だ。保守派の離反は放っておけばいい。保守派は岸田内閣を支持しなくても、自民党候補への投票はやめないし、離党する国会議員などほとんどいるはずない。岸田首相は、自ら辞めると言わない限り、来年の秋は再選だというくらいの余裕をもったほうが右顧左眄しない国政ができるだろう。