急速に進む介護度

2022年春。妻はたびたび便秘になり、3月ごろからは排便がうまくできなくなったため、介護パンツの利用を開始。

ある日の夜、子どもたちを迎えに行った後帰宅し、夕食の準備を始めようとしたところ、流しを見ると排水口あたりに何か固まりが転がっている。なんだろうと思って見てみると、なんとそれはコロコロの大便だった。

1つの水滴さえ残っていない、きれいなシンク
写真=iStock.com/kitzcorner
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ため息をつきながらトイレに捨てに行くと、気を取り直して夕食の支度に取り掛かる。しばらくして調理で出たゴミを捨てようとゴミ箱を見ると、固形物が2つほど。またしてもトイレに捨てに行く。

「ヘルパーさんが『今日は出ていません』と言っていたので、タイミングが悪かったんだと思います。まあ床とか服が汚れてなくて良かったかなと。めったにやらないゴミ箱の清掃もできたし、結果オーライと思っておきました」

2022年7月には、妻は要介護3になった。8月には夕方ヘルパーが帰宅したあと、行方不明になるトラブルが発生。いないことに気付いた緋山さんがスマホに電話をかけるもつながらず、GPSを見るとどうやら自転車で徘徊しているようで、どんどん自宅から離れて行く。緋山さんは子どもたちを車で迎えに行き、その足で妻を捜索。GPSを頼りに30分ほど探し回ると、結局自宅から5キロほど離れたコンビニで保護することができた。

さらに11月。またしてもヘルパーが帰宅し、緋山さんが帰ってくるまでの間に、なぜか上半身裸で外出。たまたま近所の飲食店に入ったところ、店員があわてて上着を着せ、警察に連絡。緋山さんは警察に呼び出された。この件を受けて妻は再認定調査を行うと、要介護4と認定された。

小旅行と難病

2023年1月。関東の妻の実家に帰省したついでに、義母と家族の5人で千葉にある鴨川シーワールドへ。介助なしでは1人で歩けない妻のサポートは義母がしてくれたが、緋山さんはちょろちょろと動き回る子どもたちに翻弄され、ほとんど楽しめなかった。しかし宿では妻のために露天風呂付きの部屋を予約したため、家族でゆったりできた。

「大浴場は同伴でもトラブルのリスクがあるので避けました。3年前に来た時はまだ息子は産まれていませんでしたが、義母と4人でいろいろ回って楽しかった記憶があり、切なくなりました」

小旅行から帰宅後しばらくすると、8月に受けた遺伝子検査の結果を聞くために病院を訪れた。結果、妻は単なる若年性認知症ではなく、遺伝子に関係する難病だった。

「検査の経過報告を聞いていたので特に驚く結果ではありませんでしたが、診断が出るというのはひとまず家族としてはスッキリするものでした。結果を踏まえて、改めてこの病気と向き合う覚悟を持たなければと認識しました」

若年性認知症支援のコーディネーターからは、「自分から何も発しなくても本人は周りの話を聞いているから、いろいろ話しかけてあげてくださいね。また、若年性認知症になった女性は更年期障害が早く来る傾向があり、妻さんの場合は冷え性になりやすいので気をつけてあげてください」との話があった。

緋山さんは、最近は必要な時以外は話しかけることが減っていたことを反省。妻にレッグウォーマーを購入した。