モノづくり大国復活に日本企業が必要なこと

それでも、トヨタは30年のEV世界販売台数を350万台とする計画を、すでに掲げている。さらに申せば、2017年秋に開催された「東京モーターショー2017」にて、トヨタのディディエ・ルロワ副社長(当時)は全固体電池について「2020年代前半に実用化を目指す」と発言していた。全固体電池の量産化をどうしても実現させる必要に、トヨタは迫られている。

トヨタは2030年のEV世界販売台数を350万台とする計画を発表している
撮影=プレジデントオンライン編集部
トヨタは2030年のEV世界販売台数を350万台とする計画を発表している

日本のモノづくりが負けた理由は複数あるが、一つあげるなら、世界トップレベルに立ったことで生まれた「慢心」あるいは「気の緩み」があったためだろう。「ジャパン・アズ・No.1」などと外からもてはやされ、いい気になってしまった。そして役に立たない過去の成功体験を捨てられなかった。

日本企業には、「足し算」はあっても「引き算」はあまり考えられない。これまで自動車産業に勝利をもたらしたガソリンエンジンのサプライチェーンを、これから先も簡単には捨てられないだろう。とくに新技術の実用化となると、サプライチェーンを含め社会がその安全性を受け入れるかがカギになる。

全固体電池が切り札になるか

特に重要になるのはリスクコミュニケーションだ。今回の全固体電池の場合なら、トヨタはそのメリットだけではなくて起こりうるリスクについても、できる限り広く、正確かつ丁寧に発信する必要がある。一方的にではなく、受け手の関係者と双方向にである。

大企業の常識は世間の常識と乖離かいりすることもあるから、自分本位に考えないことは大切。利害関係者、あるいは関係者の設定などでも、慎重さは求められよう。

リスクコミュニケーションでは、平等性も求められ、特に否定する人や反対派とのコミュニケーションを決して欠いてはいけない。

ガソリンエンジンでの輝かしい成功体験を捨てて、トヨタは新しい次元の技術をつくり上げられるのか。

いずれにせよ、今回の全固体電池は「モノづくり大国日本」を再興していくための、現在における切り札的な存在だ。「協業で得た技術を世界の標準にしていく。日本の技術を世界に示す」(木藤俊一・出光興産社長)ことができたなら。

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